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迷える羊飼いとギンセンカの乙女たち 第十七話

「我々ユニオンが危惧している資源とは水だ。マルタンの山岳地帯は協会の管理だったな」


「ただの管理をしてこいと言うわけではないようですね。戦争と呼ぶことや、武闘派を集めたと言うことは誰かと戦闘を行う可能性が非常に高いと言うことですか?」


「戦いはあくまで予定であってほしいものだが、あそこの分水嶺から東側は連盟政府の土地だというのは君たちも知っている通りだろう。その土地で伐採が始まったのだ」


「山岳地帯はユニオンの水甕でしたね。伐採により各地の川の流量が減少でもしたのですか?」


「幸い、まだそれは起きていない。

 伐採した後の土地の利用方法が問題なのだ。大量の産業廃棄物を投棄しているのだ。それも魔術関連廃棄物だ。

 知っての通り、魔術関連廃棄物の不法投棄は動植物の魔物化を引き起こすために禁止されている。

 流量ではなく、汚染の方の問題だ」


「土地管理はそちら側も私たち協会がしていたはずです。利用開発、ましてや魔術関連廃棄物処分場ともなれば、所有者といえども管理者である私たち協会の許可が必要だったはずですが」


「では、君たちはその辺の許可を出したのかね?」


「出すわけもありません。廃棄物処理施設の建設は地域住民の理解も必要です。

 山岳地帯であり人がいないからいいとはならず、施設建設による残土や土砂災害が起きる可能性等に麓の理解が必要になり却って大規模になります。魔術関連廃棄物ともなればますますです」


 連盟政府は私たち協会を下に見ているので真っ当な許可を取ろうなどと言う気は最初から無い。事後報告さえもしないのだから、物事の如何にせよ、勝手なことはしていただろう。

 だが、分水嶺の開発など何の為だろうか。ユニオンへの侵攻をするならばこのような山の中よりももっとやりやすいところがあるはずだ。


「つまり、無許可で森林を伐採し、さらに不法投棄をしているというわけだ」


「それを管理権限のある私たち協会が乗り込んで多少乱暴であってもいいから止めろ、ということですか」


 だが、ルカスは首を左右に振った。


「もちろん、それもしていただきたいのは山々だが、事態はそれだけではない」


 そして、執務机の一番上の引き出しを開けた。そこを覗き込むとごそごそと何かを探し始めた。


「分水嶺東側で不穏な動きがあるとの情報が入ってきている」


 一度手が止まると、その手を奥へと突っ込んだ。そして、何かを引っ張り出していた。

 それはファイルのようだった。表紙には“極秘”と紅い判子が押されている。

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