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迷える羊飼いとギンセンカの乙女たち 第十五話

 まずはティルナが近づいてきた。

 彼女はスーツを着ている。すらりとしていて歩く仕草一つとっても上品だ。これまでのやや膨らみのあるドレスで覆い隠されていた身体の動きがぴったりのスーツでは表に出てくる。

 それにより強調されて、生まれついての気品さが醸し出されている。


「カミュ、久しぶりね」とやや落ち着いた声でそう言った。


「久しぶりですね、ティルナ。前回助けに来てくれたときはあまり話が出来なかったですね」


「そうね」とふふっと笑った。その瞬間だけは昔に戻ったような気がした。


「ああ、二人とも」とルカス大統領が割って入ってきた。


「旧知の仲だというのは知っているが、あまり話している時間は無いのだよ。すまないな」


「こちら、ルカス・ブエナフエンテ、アルバトロス・オセアノユニオン大統領です」とティルナは右手を挙げて大統領の方を指し示した。


「カミーユ・ヴィトーと申します」


 貴族のシステムをこちらも排除していた。どうすれば礼儀正しいのかわからないのでとりあえずカーテシーをした。

 ルカスは私を見ると口を開けて止まった。ちらりとティルナを見た後、何かに気がついたようにうんうんと頷いた。


「知っているとも。昔あったのは覚えていまい。色々話も聞いているぞ。イズミ君とも知り合いだそうだな」


「ええ、彼は今どうされていますか?」


 大統領は、あぁ、と言いながら椅子の背もたれに寄りかかると視線を左右に動かして眉を下げてしまった。

 そして、「元気ではー、あるようだ。だが、まぁ……。色々あってな。別のことを頼んでいるのだが……」と気まずそうに言葉を詰まらせた。


 何やら、言いたく無さそうな様子だ。彼は相変わらず余計なことに首をつっこんでいるようだ。ルカスは咳き込み気を取り直した。


「とにかくだ。カミーユくん。君は今回の事態をどこまで把握しているかね?」


「私は何も聞かされていません。ユニオン支部付という、失礼ですが左遷と伺っております。ユニオンでの新通貨発行の手伝いに行けという指示などを受けております」


 私の話しぶりでそれ以外にも何をするのかある程度ではあるが知っていることを理解したようだ。なるほど、とルカスは頷いた。


「君の父上はどうやら未だに連盟政府の顔を伺っているようだな。左遷という形で本部から追い出したとすれば顔向けも出来るというわけだ」


「大統領、お言葉ですが、まだ本部はサント・プラントンにあるのですから、それは仕方ないと思います」


「それは本部機能をどこかに移す気でもあるのかね?」


 言葉が過ぎたようだ。余計なことを言ってしまった。だが、父上、頭取の計画の子細までは聞かされていないし、分からない。


「それはわかりませんね」とはっきりと答えた。

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