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仮初めの宮中にて 最終話

 ギヴァルシュ政治顧問はウリヤちゃんの態度が気に入らなかったようだ。


 その日以降、寝泊まりのウリヤちゃんと部屋を分けられることになった。

 私の目から離したところでおそらく彼女は暴力を振るわれるだろう。それを防ぐ為に、私に専属であり近かった五人のうち三人、それから妙に運動神経の良く若干の魔術適性を持つイルジナを彼女の方に回すように命令した。

 顧問団たちは渋ったが、彼らを移動魔法で風の強い建物の屋根の上、尖っている所の頂上に移動させて五時間ほど放置して命令通りにさせた。そのおかげでウリヤちゃんとの連絡は取れていた。


 それから毎日、ワガママな皇帝のフリをして過ごした。

 メイドさんたちを顎で使い、連絡係として建物中を走り回させていた。だが、走り回させていたのは建物の中だけでは無かったのだ。


 市庁舎にマルタンの市街地から郊外にある花屋を数件呼び出し「ここは仮とは言え宮廷であり私は皇帝になる者だから威厳を保つ必要があります。しおれた花は帝政の衰退の兆しになるので相応しい花を毎日飾りに来なさい」と命令した。

 家具も一流の物を用意させる為に街の家具屋を何軒も呼び出したり、厨房にも毎食後に顔を出し、私たちは皇帝と執政官なのだから顧問団よりも高級で美味しい物を出しなさいと命令したり、傍若無人に振る舞った。


 わがまま暴君丸出しの行動をとり続けていたが、どこも嫌な顔をしなかった。


 花屋や家具屋などの業者の呼び出しは全て顧問団たちを介さずにメイドさんたちに任せていた。

 エルフ系のメイドさんたちは私がしようとしていることを理解しているので、あえて亡命政府に対して前向きな感情を持っていない業者をピックアップして連れてきていたのだ。


 花屋には毎日交換される花瓶に紛れさせ、気に入らない家具に手紙を入れて交換させて、厨房では出入りする業者には廃棄物に紛れさせて手紙を渡した。


 亡命政府は皇帝のスピーチの際に起こる軍事行動に対して市民を盾にしようとしていること、スピーチの日程、時間帯、その他全てを彼らに秘密裡に伝えた。


 もちろん、メイドさんたちにも指示を出し続けた。彼女たちもエルフでありながらマルタンに存在するメイドの地域コミュニティやメイドギルドに参加しているのだ。

 そのコミュニティを通じて市民に“信憑性のある噂”の形でありとあらゆる情報を流し続けた。


 そこへ各々の業者たちのギルドが流す情報を加えることで単なる噂ではない真実味を帯びさせていった。


 やがてスピーチの日が近づくにつれて街は噂でざわめいていった。

 その一方で、避難を始めた者たちがいるのか、バルコニーから望む夜の街並みから一つまた一つと明かりが消えていった。


 そして、スピーチの前日の夜。ついに市庁舎を囲む半径二マイルの街並みから明かりが消えたのだ。

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