仮初めの宮中にて 第七十三話
私の話を黙って聞き入り、淡々と頷くヴァジスラフ氏に別の苛立ちを覚えていたが、私が顧問団たちと大して変わらないではないかと問い詰めると一変して目を刮目した。「私を顧問団たちと同じにされては困る」とやや語気を強めて言い返されたのだ。
彼が言うには、チェルベニメク騎士団はどうやら自分の考えとは大きく異なっていたのだ。それでも行動を共にしていたのは、皇帝の存在と言う点においてのみ共通していたからだ。
だが、それは私自身も感じていたのだ。いざ直接聞かされたからと言って然したる驚きは無かった。
しかし、どういう点が異なるのかと尋ねると氏は黙り込んでしまった。
言いたくないと言うよりも、どこか不明な点が多すぎるというような表情だった。私はそれについて深く尋ねることはやめにした。
「あなたのしたことは許されるものではありません。ですが、私の愛した人はそれを罰することは無く、償えと言いました。あなたはこれから長い償いの時間を生きるのです」
だが、氏は「甘い」と一喝し「お許しにはなるのは大きな過ちであります」と無表情で、それもこれまででは考えられなかった敬語で言い切ったのだ。驚いて口を止めてしまうと、氏は話を続けた。
「私は償いも致します。ですが、罰は必要です。あなたが皇帝であるならば、罰は与えなければ示しが付きません。これ以降、私のなす事の一切において陛下の責任を問いません」
謝罪というよりはそこに何かのメッセージがあることはすぐに分かった。
おそらくヴァジスラフ氏は何かをしようとしている。そのために私が側にいると動きづらいのだろう。
そして、この話をしなかったから氏は私を皇帝として認めたくなかったのだろう。彼の心中で、私を皇帝と認めないことへの楔となっていたのはこの話だったのだ。
私は氏に晴れて認められた、と思って良いのだろう。ここで甘さを見せては、やがてはそれが私自身を追い込むことになる。
そうであるならば、彼の求める、そして、やがて自分の為になる罰を与えなければいけないのだ。
「では、会議のとき以外は二度と私には近づかないでください。会議中も私との接点を持つことを禁じます。
今この瞬間以降、一人であなたのする全ての行動の責任を負いなさい。顧問団たちにはあなたへの処罰について私自身の口からお伝え致します。
その方がおそらく彼らも喜ぶでしょう」
ヴァジスラフ氏は「仰せの通りに、陛下」と跪き顔を下に向けた。




