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仮初めの宮中にて 第六十五話

――とこの場で言ってしまいたいところだが、実はクロエにとって追放されることも手の内である。

 最も信頼する側近を追放するということにより、より独裁的な存在である風を演出する為だ。


 クロエと私は“今後”について具体的な議論をしたことはない。だが、このままマルタンを占拠し続けるのは不可能だということは共通見解だとお互いに認識はしている。

 クロエはそれを考慮した上での備蓄を調整しているはずだ。おおよそ、スピーチの日を中心に三ヶ月。予備を考えれば半年。クロエにとってもタイムリミットは半年なのだろう。

 だが、追放されても問題がなくなった、ということは水面下でクロエの目論見への準備は整ったと考えられる。

 それをカモフラージュするために顧問団たちには予備と希望的観測を込めて一年と伝えたのだろう。


 おそらく事態が大きく動くのは半年後。考えられるのは、連盟政府による帝政ルーアの土地となったマルタンの併合だろう。

 しかしそれは、このまま私がクロエの言いなりになっていれば、の話。


「悩ましいですが、仕方がありませんね」


 僅かな悩みを垣間見させた後、私は二人の意見を了承した。

 悩んだのはふりでいい。クロエの思惑通りに行かせるには、私は無知で愚かな暴君でなければいけないのだ。

 顧問団たちには冷たくありつつも、自分の意見をあまり表に出さずに首を縦に振る。それでいいのだ。


「確かに彼女は会議での態度は顧問団たちに対して挑発的で進行妨害ともとれますからね。

 連盟政府での責任ではなく、彼女個人の責任で追放されたことに致しましょう。無駄に刺激してさらに連盟政府の手勢に入り込まれても迷惑です。

 どのような事柄に対する責任についてはあなた方顧問団たちにお任せ致します」


 ギヴァルシュ政治顧問とルクヴルール軍事顧問は顔を見合わせて笑顔になった。

 穏やかな笑顔のようで、そこには企みがうまくいったという、口角のひくつきを抑えられない者から来る笑みも確かに垣間見えた。


「賢明な判断だと思いますわ、皇帝陛下。では明日の会議でクロエには帰国願うと致しましょう」


 二人は肩を下ろすように息を吐き出した。

 一段落付いたようなので、私は「お話しはそれだけでしょうか」と終わらせようと椅子から立ち上がろうとした。しかし、二人は石のように動かなかった。


 そこへギヴァルシュ政治顧問が「実はもう一方、警戒なされた方がいい者がおりまして」と再び切り出した。


 覆い被せるようにルクヴルール軍事顧問が「ヴァジスラフ氏です」と付け加えたのだ。

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