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仮初めの宮中にて 第五十四話

「(ホンット、無駄な会議ばっかり。

 会議とか言ってるけど、自己中な大人が自分の都合の良い方向になるまで質問繰り返してるだけじゃないの? バカみたい!

 そんなの会議って言うのかしら。私よりガキみたいな事、毎日して飽きないのかしら。それとも会議なんてガキでも出来るのかしら。

 だいたいアニエスもよ! あんたがもっと強きに出ないからこんなどうしようもないのよ!)」


 明くる日の会議が始まる前、顧問団が集まり始めるや否や、ウリヤちゃんはルフィアニア語で何やら思い切りまくし立てた。

 いつもならヴァジスラフ氏が簡単に通訳をするのだが、今日は氏は何もせず腕を組んだまま動かない。


「ホンット、うるさいガキですこと。

 いつまで経ってもエノクミア語は覚えない。覚える気が無いのではなく、ただお馬鹿なだけなのかしら。

 メレデント元民書官の家族でなければ、孤児院に放り込めたのに」


 ギヴァルシュ政治顧問は笑顔でウリヤちゃんを罵った。

 彼女にイントネーションや表情などの非言語によって悪意を伝えないようにする為だ。

 だが、ウリヤちゃんは――。可哀想に。


 しかし、その日はいつも通りではなかったのはヴァジスラフ氏の態度だけではなかったのだ。

 ウリヤちゃんは、相手がどれほどニッコリ笑顔であっても言われていることは否定的であるというのは理解しているので、悲しそうに眉を寄せて縮こまってしまう。


 しかし、その日はウリヤちゃんは縮こまることも表情を隠すこともなかった。

 それどころか「ギヴァルシュ政治顧問」と突然名指しして、ギヴァルシュ政治顧問の方を真っ直ぐに見つめたのだ。


「今、たった今。私に向けてなんと仰ったのか。もう一度お聞かせ願えますか?」


 顧問団たちは目を丸く大きく開いてウリヤちゃんを一斉に見つめた。


 ウリヤちゃんは見つめられても物怖じ一つ見せず

「もう一度、なんと仰ったのですか? もちろんエノクミア語で構いません。エルフの国家の国政に携わる者でありながら、ルフィアニア語を一切覚えようとしないあなたでも大丈夫なように」

 と語気を強めて再び尋ねた。


「ウ、ウリヤちゃん、あなた」


 ギヴァルシュ政治顧問は引きつった顔のまま「エノクミア語しゃべれたのね」と裏返り震えた声でそう言った。


「当たり前でしょ。私は執政官よ。

 今の、いえ、これまであなたが私に向けて言った言葉、もう一度仰っていただけますか?

 全部、一つ残らず。一字一句違わずに」


 ウリヤちゃんのまるで長年話していたかのように流暢なエノクミア語に顧問団たちはただただ硬直していた。

 ギヴァルシュ政治顧問は驚いた様子を見せないヴァジスラフ氏と私に気づき、机から立ち上がると「クロエ代表、あなた知っていたのね? 何故黙っていたの?」と語気を強めて問いただした。


「何故って……」とクロエは困ったような顔をして両手を前に突き出した。

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