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仮初めの宮中にて 第四十九話

「何でも、普通の治癒速度ではないそうですね。まるで治癒魔法でも使われているかのように。それも魔石程度ではないような」


 どうやらバレていたようだ。思ったよりも早かった。まだまだヘマさんの治療は途中だ。あと三日はかけ続けたい。

 何か言い訳を考えて、視線が泳いでしまった。


 そこへ追い打ちをかけるように「アニエス陛下」とルクヴルール軍事顧問が付け加えた。


「そういえば最近、ヘマ・シルベストレの部屋に頻繁に訪れているそうですね。あなたは確か、治癒魔法に覚えもあったはず」


 私がヘマさんの部屋を訪れて治癒魔法をかけていることはバレているのだろう。

 杖がなければ治癒魔法はかけられない。魔石も手に入れる機会など無い。

 ルクヴルール軍事顧問は先ほどの怒りの余韻を残しているのか、声も大きくやや早口になっている。

 だが、やり込められたことに対してやり返してやろうという魂胆が見えるほど顎を高く上げているのだ。


「こちらからもお伺い致しますが、私とウリヤ執政官になぜヘマ・シルベストレとアニバルの部屋の場所を教えてくれなかったのですか?」


 魔石で治癒魔法をかけているという嘘はつけない。ついたところで、どこで手に入れているのかで責められてしまう。杖を使っていると言うなど、もってのほかだ。

 明らかに動揺を隠すことが出来ず話を逸らすような質問をする私の様子を見ながら、


「それはあなた方が聞いてこなかったからです。聞いて気さえすれば、我々は快く教えていたというのに。

 しかし、話題を変えるのは止めていただきたい。あなた、その身一つでどうやって魔法を使っているのですかな?」と睨みつけてきた。


「その件について――」


 クロエが突然声を上げて「よろしいですか」と割り込んできた。

 このときばかりは助け船が来た、彼女が何かフォローをしてくれると、私はにわかに安心して息が漏れてしまった。


 しかし、クロエは味方ではなかったのだ。


「陛下は確かあの頼りないメイド、イルジナと仲がよろしかったですわね? イルジナは魔法関連道具の管理をしていましたね?」


 クロエはテーブルに両肘を置いて前に乗り出し、私を見つめて顎を引いて笑った。

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