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仮初めの宮中にて 第四十五話

「そういえば、その点についてクロエと意見が一致しているようですね」


「あれは連盟政府の回し者だ。だが、確かに皇帝による絶対統治には理解を示している。

 ただ、それは理解ではない。その方が連盟政府にとって都合が良いからだ。

 最高権力を分散するよりも、一人にまとめておく方がコントロールしやすいからだ。私と根底から意見が一致しているわけではない」


 氏の回答に私は混乱を抱いた。もとより抱いていた混乱が絞り出した水のように表面に浮き出てきたのだ。


「ここはエルフの国であるにもかかわらず、顧問団たちの半分は人間ではないですか。

 その二人、ギヴァルシュ政治顧問、ルクヴルール軍事顧問は元はと言えば連盟政府の地方の三流役人。あ、(聞かれているのに言ってしまった……)。は、派遣されたも等しいでしょう。残りの二人の顧問団はエルフ。

 だけど、イマイチ影が薄い。その前提を考慮すれば彼らもクロエと同じはずです。

 しかし、私の目には顧問団たちとクロエの意見が一致しているようには見えない様な気がしますが?」


「当初顧問団たちはクロエに諂っていた。しかし、現在は言ったとおりクロエと顧問団たちは険悪だ。

 クロエは彼らへの険悪さが向けられるようになるのと入れ替わりで私には寛容な姿勢を見せ始めたのだ」


「何故かご存じですか?」


「それは私にもわからない。ですが、あなたが共和国内のグラントルアで目撃され、その噂が真実味を帯びてくると同時に意見の不一致が起こり始めたことは言える」


 分からないはずはなかろう。

 私は、氏の言葉で、どこかの点、何かの出来事により、クロエと顧問団たちの間で見解の相違が起きたと言うのが分かった。

 クロエは私を氏同様に会議で前に押し出す。一方で顧問団たちは私を抑え込もうとする。

 それから考えれば自ずと分かる。顧問団たちは王政としてこの国を運んでいく方へと大きく傾いたのだ。

 氏は言わなかった。私同様、分からないはずはなかろう。強いられた盗聴装置としてのマフレナが後ろにいるからだ。


「今この亡命政府は他国他地域からの外圧ではなく、内圧によって歪な形になっているのだ」


 氏はそう付け加えて話を止めた。話は一段落付いたようだ。私も氏の意向はある程度理解することが出来た。

 会議のときに出されていたカップの底に僅かに残った紅茶を見た。カップに色が付いてしまいそうだ。

 マフレナが近くにいながらカップに紅茶を注ごうとしないときは、マフレナが私にとって不都合なことをするという合図だ。


「なるほど、分かりました」


 マフレナの方をちらりと見た後、「私はこの場でどちらが正しいという結論を出すことは控えます。情報が少ないので」と言って姿勢を伸ばした。


 氏もマフレナに視線を送ると「賢明な判断だ」


「最後に一つ、帝政ルーアは何故この期に及んで亡命政府などを立ち上げたのですか?」

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