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仮初めの宮中にて 第四十三話

「彼らに帝政思想(ルアニサム)かと尋ねれば、そうだと返ってくるだろう。だが、それはうわべだけだ。

 チェルベニメクとはエノクミア語“紅い袂”と言う意味になる。

 紅い袂とは、かつてルボミールの双子であるルドウィークとマルツェルが来ていた紅い服の袂だ。

 後にそれが判明したことに由来している」


「歴史は聞きました。双子の子どもたちが皇位継承で争い、私の祖先であるルドウィークの次男がエノクミア大陸に入りフェリタロッサ家として占星術師一族を興したのですよね」


「そうだ。紅袂の剣(チェルベニメク)騎士団はフェルタロス王朝の統治システムを再現しようとしていたのだ」


「長く続かなかった王朝ではないのですか? 二年も持たなかったと聞きましたが」


「確かに短い王朝ではあった。

 だが、国家が出来て統治体制が代われば多少の混乱は避けられない。そこへアカアカ・カルデラの大噴火が起きたのだ。

 混乱だけではなく災害まで起きてしまってはどうしようもない。噴火がなければ、帝政ルーアは今でもルーア王国だったかもしれないと私は考えている。

 だが、帝政は帝政。優劣ではなく残り永く繁栄した帝政の方が結果的に良かったというわけだ」


「帝政と王政、何が違うのか、私には分かりませんね」


「帝政は皇帝による絶対的支配だ。全てのことは皇帝に決定権がある。

 一方の王政は、皇帝は王以上で高次の存在、人間で言えば神となる。その下に四人の王がつき、政治・司法・軍備・金融でそれぞれに最高決定権を持つことになる。

 これは皇帝一人の負担を分散させることでより効率的である」


「今まさにこの亡命政府がそうであるということですね」


 そして、現共和国との違いは皇帝がいるかいないかだけである。何故共和国で満足できなかったのだろうか。

 おそらくだが、共和国の四省長官は現時点でギンスブルグ家とマゼルソン家が仕切っている。共和制の歴史はそこまで長くない。

 だが、これまでの長官たちは皆超がつくほどの有力者ばかりだ。ギンスブルグ家は帝政では貴族であり武器商人を長年営み、四十年前の戦争や共和制移行時の諍いで巨万の富を築いた。顔も名声も広い。

 マゼルソン家は帝政の頃からある由緒正しき家柄。帝政の政治中枢にいながら共和制移行時に解体されることなく、エルフの社会において皇帝に次ぐほどに必要とされている一概に由緒正しいと言う言葉ではまとめられない高貴な家柄だ。

 要するに、席は高嶺の上の雲上に咲く花であることに加えて、充分な者たちによって隙間無く満たされているのだ。


「では、これから皇帝となるあなた自身は亡命政府の体制に対してどう感じているかね?」

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