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仮初めの宮中にて 第十四話

やや不快感をあらわにしたかのように刺々しくそう言った。

私の遮るような質問に対して不快感をあらわにしているのではなく、ギヴァルシュ政治顧問の言葉を遮るためにあえて強くそう言ったようにも聞こえた。

ギヴァルシュ政治顧問もそれに押されたのか、話を止めると私を睨みつけてきた。だが、すぐに表情をいつもの作り笑いに変えると「何かご質問ですか」と尋ねてきた。


「私はこの宣言について、何のお話も伺っていないのですが? 私が皇帝になることはよく知っています。ですが、これについて何も知らされていないというのは問題があるのではないでしょうか」


「そのようなことですか。あなたがいらっしゃったのは昨日であり充分な議論がなされておらずまだ何も決まっていないので、決まり次第お伝えしようという所存でしたの。お手を煩わせるわけにはいきませんから」


「私は」とクロエが前屈みになり眼鏡の上目遣いになり割り込んでくると


「外部の者である側面が強いですが、それについては知りませんでしたわ。そういうことになっていたのですね。しかし、私はまだしも、どういう段階であっても陛下にはまず最初にお伝えするべきかと思いますが。アニエス氏がここに到着したのは昨日今日でしたから仕方がないといえばそうですが、食事中にしろ立ち話にしろ、話す機会は充分に会ったはずだと思いますよ。二度とこういったことが起こらないように気をつけてくださいね」


とやや低い声だが丁寧にそう言った。そういうと私の方へ振り返りニッコリと笑いかけてきた。


バトンをクロエに投げられたような気がして、そして尋ねたいことはもう一つあったのでこれ幸いにと私が「もう一つよろしいですか」と言うと「アニエス氏」とルクヴルール軍事顧問が組んでいた腕をほどくと重い口を開けた。


「クロエ氏がたった今言ったとおり、あなたはまだ来て日が浅い。もう少し話を聞いてからにしていただけないですか。しばらくは私たちに従っていただきたい」


そう発言をしたルクヴルール軍事顧問を見つめるクロエとヴァジスラフ氏の視線が鋭くなった。

ギヴァルシュ政治顧問が突然高笑いを始めると、


「それでは私たちの国になってしまいますわ。アニエス氏にも話合いに参加していただかないと。帝政ルーアに皇帝は必要不可欠。アニエス氏なくして成り立ちませんもの」


と言った。おそらくギヴァルシュ政治顧問は冗談のつもりで“私たちの国”と言ったのだろう。だが、高笑いは裏返るように不気味な声で、冗談では済まされないような不穏さが垣間見えた。


そこへ、その不穏さを抑え込むように「それは笑えない冗談ですわね」とクロエの低い声が響いた。彼女を見ると、ギヴァルシュ政治顧問の冗談と高笑いを握りつぶすように無表情になっていた。


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