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仮初めの宮中にて 第十話

私たちがセシリアの代理を立てたルスラニア王国の女王は、今現在その代理の子が女王として立場に就いている。特徴も濃く、古代ブルゼリアでいうところの正統ブルゼイ族であることに変わりはないが、ブルゼリア王家の血筋かどうかは分からないのだ。

王様という者は、多くの人がその者を王だと言うことで王様になるのだ。

王国を作るのは血筋ではなく、臣民。

庶民に目を向けている偉大な王様の言葉のようで、極めて聞き当たりの良い言葉に聞こえるが、誰でもなれてしまうと言うことでもあるのだ。


今まさに私がそうであるように。


私はエルフの国から遙か北に離れたブルンベイクの田舎娘に過ぎなかったはず。それが今ではやがては帝政ルーアの皇帝となる者となった。


繰り返すが、王様という者は多くの人がその者を王だと言うことで王様になる。誰が私のような田舎娘を女王様だと言い始めたのか。そして、それを後押ししたのは一体何か。


言い始め、つまり噂の発生源ははっきりしない。だが、時期としてはおそらく、金融省長官選挙の際にイズミさんたちと共に私が共和国に入った後だ。そのときはギンスブルグ家の邸宅から一歩も出ることは出来なかった。女中さんたちがした噂話から少しずつ漏れていったのだろう。あそこの女中さんたちはほとんど軍人だ。それでも女中である事に変わりはなく、グラントルアなどの女中同士のコミュニティにも加わっている。主に情報収集がメインではあるだろうが、こちらから漏れ出すこともゼロではない。しかし、欲するなら与えよ。情報が欲しければ与えなければ得られない。そうして漏れていった情報と、ふらふらとグラントルアを出歩いたときや、共和制記念病院のホスピスでのシンヤさんとの面会時にも噂は広まっていったのだろう。


そして、その噂を噂ではなくしたのが、私の時空系魔法だ。


それが知れ渡るきっかけはクロエだろう。クロエは諜報部員であることを考えれば合点がいく。


私の身は必ずしも安全というわけでは無い。この状況をより平和的に、出来る限り争いを起こさずに打破するにはどうすればいいか。

それにはまずは情報が足りない。しかし、私たちは閉じ込められてしまった。どうすれば自由に過ごせるというのだろうか。


顔を上げると向かいに座るウリヤちゃんが何やらじっとこちらを見つめている。目が合うと首を背けた。


しばらくしているとドアが強くノックされた。そして、こちらの返事も聞かずにドアが開けられた。

今度は誰が来たのかと思いそちらを見ると、ヴァジスラフ氏がいた。それもすごい剣幕だった。



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