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仮初めの宮中にて 第四話

私はウリヤちゃんの隣の開いている席に向かった。


「初めまして、ウリヤ・メレデント」とまだごねて椅子の上で動いているウリヤちゃんに話しかけた。

執政官というのは重要なポストのはず。にもかかわらず、それぞれに呼び方が異なるので、私はあえてちゃん付けでも執政官とも呼ばず、フルネームで彼女を呼んだ。


「あなたの話は色々聞いているわ。よろしくね」と右手を差し出すと「(知らない)!」と思い切り叩かれてしまった。打ち所が悪かったのか少し痺れるような痛みが掌に残った。

強く当たったことを彼女も自覚しているのか、不安そうな表情で上目遣いで私の瞳の奥を探るように左右の目を見つめてきた。それは子どもがよくする大人の表情を覗うときのもので、震えていない瞳に恐れが垣間見えている。


この子は本当にまだ子どもなのだ。

そして、メレデント元民書官がしてきた行いから共和国やユニオンのマスコミなどで作り上げられていたようなメレデント家のイメージをそのまま持つような悪い子ではない。


我が儘になるのは何か理由がある。父親も母親もおらず、残っていた家族は祖父一人。しかし、その祖父も暗殺され、その暗殺にこの子自身も巻き込まれ九死に一生を得た。

何が彼女を不安にさせているのか、それを考えるにはあまりにも原因が多すぎる。


私とウリヤちゃんのやりとりを見ていたギヴァルシュ政治顧問が「ウリヤちゃん、あなた、お行儀悪いわね」と立ち上がるとウリヤちゃんの側までかつかつと足を鳴らして近づいてきた。そして、顎を高く上げるとウリヤちゃんを見下ろし「今あなた、皇帝に暴力を振るったわね」と右手を上げ始めた。


するとウリヤちゃんは身体を縮込ませて目をつぶった。


それを見たギヴァルシュ政治顧問は口角を上げると「お仕置きが必要ね」と振り下ろそうとしたのだ。


咄嗟に私はウリヤちゃんに覆い被さるように身体を前に乗り出し、ギヴァルシュ政治顧問との間に割り込んだ。


「初対面なのですよ。緊張してしまうのは仕方がありません。手を上げることまでないと思いますよ」と言ってギヴァルシュ政治顧問をなだめようとした。


「しかし、その子の我が儘は今日に限ったことではないのですよ。今日は特に酷い有様でしてね。しっかり言わないとその子の将来の為にもなりません」と呆れかえるような顔で額を押さえた。


「この子は“執政官”ですよ。立場で言えば、皇帝の側近でもありあなたよりも偉いはずです。この子に手を上げるというのは、私に手を上げると思いなさい」と強く言い返した。



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