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仮初めの宮中にて 第三話

「あなた、人間ですね。あの、お名前分かりませんが、お隣の女性の方も。なぜエルフの国の頂点に人間がいるのかしら?」


「これは失礼。申し遅れました」と派手な女性は目を開いた。


「私は、ギヴァルシュと申します。政治顧問を担当しております。

 しかし、妙なことを仰いますね。国家として成り立てば、この国で一番偉いのは皇帝となるあなたではありませんか」


「私も人間であると?」


 左様とも答えず、目つぶり大きく頷いた。


「人間どもめ。我々を差し置いて、自分たちから自己紹介とはな」


「そうだぞ。慎め。本来なら我々純然たるエルフのみがこの場にいるべきなのだ」


 年老いた二人のエルフが割り込んできた。


「これは失礼しまたわ。御老賢方には長すぎる待ち時間でしたね。白髪の方がフィツェク法律顧問、かぎ鼻で口ひげの方がアブソロン金融顧問です」


「小娘が。蔑むような紹介をしおって」


 それから二人の老エルフは黙り込んだ。

 軍事、政治、法律、金融。現在の共和国の四省長官制度をそのまま模倣しているのだ。

 しかし、そのうちの半分を人間が支配しているというのは、やはり亡命政府は連盟政府の息がかかっているのだろう。


「そして、連盟政府とのパイプ役のクロエさん」


 クロエはそう言うとにっこり笑った。

 この場にクロエが、聖なる虹の橋(イリスとビフレスト)の者がいるということで、それははっきりしている。


「アニエスさん、いえ、陛下とお呼びした方が良いかしら? あなたとの付き合いも短くはないので、敬語も不思議に感じますわ」


「好きにしてください。まだ私は正式に皇帝になったわけではないのですから」


「それでは、アニエスさんはウリヤ“ちゃん”の隣におかけください」


 亡命政府の黒幕たちの何気ない会話だった。だが、クロエとこの各顧問の四人との間に何やら隔たりがあるような気がした。

 クロエとヴァジスラフはウリヤちゃんを“執政官”と呼んでいるのに対して、顧問たちは頑なに“ちゃん”付けで呼んでいるのだ。

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