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ツヴァイターラングロジェの銃声 第十九話

 だが、余計なお世話だ。


 俺はこいつらに英雄扱いされる暇など無い。否、英雄扱いなどされないだろう。

 こいつらの野望が叶うまで――皇帝の後押しを受け共和国を転覆させ帝政を復活させるまで拘束されてしまうのは間違いない。

 スタンドプレイを演じる実行犯は、野望への道中において障害になる可能性が高いからだ。

 野望を叶えるだけという単一の目的に集められた集団の中で、手を汚す内に様々なことを知り、やがて自分の考えという自我に目覚め、それが集団に牙を剥くこともある。

 この手の野望において、実行犯はよほど従順でも無ければ使い捨てなのだ。


 何かを期待してユリナの方を見てしまった。だが、彼女は既に動き出していた。

 ユリナがその男の方へ振り返ると「じゃコイツの名前を言ってみろ」と言い返したのだ。


 隊長格の男は「君、名前と所属番号を言いなさい! そうすれば軽く済むぞ!」と先ほどとは打って変わって子どもの些細ないたずらを諭す優しく包み込む父親のような声で促してきた。


 それでも俺は何も言わない。

 俺の罪は重くていいんだ。帝政思想(ルアニサム)としての俺は、共和国では凶悪犯罪者でなければいけない。

 いや、俺個人であっても罪は重くなければいけない。俺は偉大な人を撃ったのだから。

 俺は撃ってから気づいた。マゼルソンは共和国での庇護者の一人だったことに。


「俺はルアニサム。共和国政府に対して反発的な思考に基づいて、マゼルソン長官を撃った。反国の徒である俺にそんなものは最初からない」


 隊長格の男に首だけを向け、うつむき加減でそう言った。下を向いてはいたが、その場にいた全員に聞かせるようにはっきりと言った。


 すると男は睨みを利かせると歯を食いしばった。

 悔しいか。俺が自分の口でそう言ってしまえば、お前らも俺を逮捕しなければいけない。


 ユリナが「そういうわけだ」と再び口を開いた。


「お前ら警備隊は私ら軍よりも先にコイツを包囲していた。逮捕する余裕もあったはずだ。だが、しなかった」


 さらに止まらずにユリナは口角を上げ、

「そういえば、さっき、お前らコイツに敬礼して花道作ってたよなぁ? 共和国では絶対禁忌とされているはずの帝政思想(ルアニサム)であると宣言したコイツに。それが一体、どういうことか……」

 と脅すように言った。


「ええい、黙れ!」と男は手を大きく払い「逮捕権は我々市中警備隊にある!」とユリナの言葉を遮った。

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