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ツヴァイターラングロジェの銃声 第十四話

「今後現地に入れば、軍部省、金融省からも何かしらの指示がでるだろう。

 だが、私の指示に、それもたった一つ、市中警備隊のその制服を着て行けというものだけに従え。

 それにさえも疑問を持ったならば、皇帝が、いや、君の愛する内縁の妻が死なずに済むというシナリオだけに従え。今回の作戦の責任は私が取る。

 だが、比較的簡単なのではないか? しがらみからは解き放たれ、アニエス女史は絶対に殺させないという姿勢を貫けるのだから」


「そんな簡単にハッピーエンドにたどり着けるとは思いません。トゥーランドットではあるまいし」


 マゼルソンは笑うと、「『トゥーランドット』をハッピーエンドだと、私は思わない。トゥーランドットに拷問されても名前を教えなかった女奴隷はどうなった思うかね?」と尋ねてきた。


「先ほどのあらすじを聞いただけでの判断ですが、奴隷は結ばれなかった、ということですか?

 確かに、オペラは惚れた腫れたがメインテーマで、結ばれなければバッドエンドですね」


「だけではない。女奴隷は姫になぜ教えないのかと尋ねられて、それは『愛』だと言い放った。そして、姫の前で短剣で自らの胸を刺し、果てたのだ。

 死というのは、不変にして最悪の結果だと思わんか。死さえしなければ、結果はまだ出たわけではない。

 生きてさえいれば、その手の中に自らの求める最善をつかみ取るチャンスがある」


 オペラはアリアの最高潮へと向かい始めた。テノールの男が舞台の真ん中に立ち、エノクミア語の“Nessun dorma”を喉を振るわせて歌い始めた。


 するとマゼルソンは「そろそろか」とサイドテーブルの上に置いてあった銀で装飾の施された年季の入った小箱を持ち上げ、蓋を開けた。

 そこには魔力雷管式リボルバーと六発の弾丸が入っていた。箱とは裏腹にまだ新しい物のようだ。油の匂いがふんわりと漂った。

 だが、それがいつになく鼻につくようで、息をするのも止めてしまおうとすると、途轍もない嫌な予感が全身を駆け抜けて首筋に縮むような痛みが走った。


「さて、君がやることはわかるな? 今この瞬間は市中警備隊員であり帝政思想(ルアニサム)の君がすべきこと」


 俺は今、市中警備隊としてここにいる。そして、帝政思想(ルアニサム)を持つの隊員の一人と見なされている。そして、誰よりもマゼルソン法律省長官の近くにいる男。

 さすれば、拳銃を渡されてすることは自ずと分かる。


「君の皇帝への“真実の愛”を信じさせて貰えないか」

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