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紅袂戦役 第二話

 それからは特に何も起きることはなく時間は過ぎていき、やがてルボミールにも抗えぬ年波が押し寄せてきていた。次期皇帝がどちらになるのかと言う話が再び囁かれるようになったのだ。

 公の場で大きく話されることはないが、小鳥のさえずりのように農場のサイロの裏、街角の影、城の暗い小部屋で話されることが多くなっていった。


 そのような折に、かつて罪を犯しながらも立場を追われることがなかった将軍ヘルベルトに贈収賄の疑惑が持ち上がったのだ。

 親族の営む店への口利きをし続けていたという、国政に関与している者なら誰でもしていそうなものだった。


 誇り高い将軍がそのままではただの汚職で首を切られることになる。そして、ヘルベルトはまだルドウィークの側近であり、自らのしたことによりルドヴィークの帝位継承への悪影響がでるのではないだろうかと考えた。

 主の将来を案じたヘルベルトは自ら弟マルツェルの首を狙い、そして、捕まることになった。


 以前暗殺が未遂に終わったとき、ルドヴィークがマルツェルの命を守る為に側近を全て処罰したが、自分は免罪を受けた。それに報いる為に必ずルドヴィークを皇帝にすると誓った。

 そのために自ら行動を起こしたのだ。


 ヘルベルトはその全てを告白し、自分はルドヴィークを皇帝にする為に自分自身の意思のみでマルツェルの命を狙ったと自供した。


 程なくして、ヘルベルトへの判決は下された。

 ヘルベルトの責任は、全て主であるルドヴィークにあると裁判で審判が下されたのだ。

 当時の法律を司る部門は弟のマルツェルの支持者が多かった。

 実は、それを知っていた弟の従者たちは、ヘルベルトの誇りにつけ込みマルツェルを殺すように焚きつけることでルドウィークの立場を貶めようと画策していたのだ。


 そして、ルボミールは判決が出た直後、兄弟同士で争うという醜悪なお家騒動の終止符を見届けるように崩御した。

 病床に伏せっていたルボミールは謀など知らなかった。終止符は打たれたと安堵して旅に出たのだろう。


 ルドヴィークはやはり皇帝にはなれなかった。マルツェルが帝位を継ぐことが決まったのだ。


 マルツェルは司法を取り巻く環境がルドウィークやヘルベルトに不利であること、そして、ヘルベルトが謀略に嵌められたことを知っていたので、ルドヴィークと彼を取り巻く者たちを処刑せずに北の僻地であるベタルに封じた。

 ヘルベルトはそのまま処刑される運びとなっていたが、ルドヴィークはヘルベルトの救済を懇願し、グラントルアの地を二度と踏まないと誓わせて、共に封じられることになった。

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