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巨塔集う 第五話

「本作戦はユニオン・共和国協同で行われる。理由は言わなくても分かろう。

 皇帝の殺害とはつまり帝政ルーアの終焉を意味する。亡命政府もその瞬間、ただの不法な政治集団となるのだ。

 皇帝殺害までは共和国が主導で行っていただく。我々ユニオンは殺害後に本格的にマルタン奪還へと動き出す。

 もちろん、そこに至るまで何も協力しないと言うことはない。

 マルタン奪還作戦の成功は共和国の作戦の成否に大きく左右される。殺害と奪還、どちらも成功して初めて成功と言えるのだ」


 ルカスは肩幅の広い白スーツを大きく翻し、拳を振り上げて力強くいった。


「で、その作戦てのはどういうんだよ? 人に家族を殺せとか言うクソ以下の作戦はよ」


 長官たちは腕を組んだり、顎を弄ったりしながらルカスの話に神妙な顔を向けていたが、俺はそれをぶち壊すように悪態をつきながら尋ねた。

 ルカスは俺をムッと見ると「説明するから黙っていたまえ」と囁いた。


「来週にマルタン芸術広場で皇帝のスピーチが行われる。正式な戴冠式はその後だが、ルーアの末裔がそこで正式に皇帝であると宣言をするという情報を掴んでいる。

 彼らも宣言をゲリラ的なもので行ってはインパクトはあっても、いまいち公的さに欠けると思ったのだろう。

 先ほど、イズミ君が気を失っている間にキューディラの回線と掲示板機能を駆使してスピーチ内で何を宣言をするのか広く公表してきた。そこでアニエス女史が自らが皇帝と名乗るそうだ。

 我々がするのは、そのスピーチの終了と同時に狙撃だ」


「おいおい、ユリナは俺にアニエスを殺せつったぞ。俺は狙撃なんか出来ないぞ?

 銃の扱いは北公にいたときに習わされた。でも狙撃てのは、撃てて当たれば良いで済む話じゃない。狙って必ず当てなきゃいけない。

 そのための集中力も忍耐力も俺にはないからな。そもそも殺害なんか出来るわけ無い」


「そうだろうな。君の役目はマルタンにいること、つまりはアンカーだ。皇帝の、アニエス女史の精神的な楔だ。君がマルタンに来ていることを言えば、彼女は安心してマルタンから逃亡を図ろうとはしないだろう。

 従者や側近たちも彼女がそういえば、殺害計画がばれたところで動こうとはしないはずだ」


「ふざけんなよ。俺を誰だと思ってんだよ。アニエスは俺の家族だ」


 ルカスは些かムッとした表情になり「家族? 法的にそうなのかね?」と顎を上げて見下ろすように尋ねてきた。

 俺が何も言わずににらみ返すと、目をつぶりため息を溢した。そして、顔を左右に二、三度振り、


「やれやれ、私も驚いたぞ。君が私の娘たちを避ける理由が彼女だったとはね。ユニオンに来たときに何故言わなかったのか。タダのお堅いヤツというわけではなかったのだな」


 と残念そうな声で言った。


「そうだ。俺はことが落ち着いたらアニエスと籍を入れて正式に家族になるつもりだった。

 俺が今のところ所属と言うことになっているハズのアルバトロス・オセアノユニオンとかいう国でな。

 ルカスさん、あんたなら俺に国籍をくれると思ったからだ。だから、家族を大事にするあんたを信じてた。

 だが、こんなに簡単に家族を殺せなんて言うとは思わなかった。とんでもないクソ野郎だな」

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