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慟哭の痕 第十四話

「御大層だなぁ、オイ、英雄さまよぉ。代わりなんざ腐るほどいるだろ。自分が特別だと思うなよ?

 お前は治癒魔法が使えるから特別なワケじゃない。解剖学だとか、生理学だとか知識に基づいて治癒魔法をかけてるだけだ。

 最近お前が知識を広めたから、お前と同じ程度に治癒魔法がかけられるヤツも増えてるだろ。

 治癒魔法で英雄ヅラすんなら、治癒魔法じゃどうにもならない細菌とかウィルス感染に対して抗生物治癒魔法とか抗ウィルス治癒魔法でも作り出しな。そしたら褒めてやるよ。

 お前が特別なのは移動魔法が道具無しで使える、その一点だけだ。移動魔法も最近じゃ車だの何だので使う機会減っただろ。

 移動魔法が如何に飛行機よりも速かろうとも、これから個人の意思だとか正義だとかメンタルだとかが絡む移動魔法は戦略的に使いづらくなって、ただ手元に置いておくだけになるぜ?

 ましてやお前のような豆腐メンタルは余計だ。閑職で偉そうに出来るぜ。よかったな。

 それによ、お前と同じくらい甘やかされてたヤツの赤髪の女がいなくなってもシーヴェルニ・ソージヴァルは潰れてない。

 つまり、お前一人いなくなってもかわらねぇってことだよ。自分でも言ってたじゃねぇかよ。それはお前もわかってんだろ」


 そうだ。俺の使う治癒魔法は特別ではない。

 他の治癒魔法を使える者よりも確かに効果的だが、自分よりも強力に使える者も少なからずいる。

 そして、俺はその人たちに、実力を最大限発揮させ効果的に効かせる為の知識を伝えた。俺に非番が増えたののも、その人たちが充分に知識を使いこなせるようになってきたからだ。

 その知識も大学時代の講義で習ったにわかなものでしかない。

 移動魔法も俺がいなくなったからと言ってシーヴェルニ・ソージヴァルから使える者がいなくなるわけではない。

 今はユカライネンがマジックアイテムを持って移動魔法を使っている。そして、ユリナの言うとおりに使う機会も減った。

 移動魔法が道具無しで使えるのは世界でも分かってる限り指折りの人数しかいない。

 それぞれに、能力を隠して生きたり、逆に大きく公表して組織の保護と制約を受けたりをしている。

 そのほぼ全員は遺伝形質だが、俺に至っては後付けで遺伝するかどうかは分からない。

 次世代に渡って立場というものを維持できるのかどうなのかわからない一番不安定な存在なのだ。


 その点において、アニエスは特別だ。何年に一人の割合で発現するレアと比べても、アニエスはよりルーアの血統に近く、子孫には100パーセント時空系魔法の素質が発現する。


 そのアニエスでさえも、いなくなったからといって国が傾きはしなかった。

 俺などいなくても、と卑屈になりそうになった。


 それはそれだ。俺とアニエスの個人的な話とは違う。


「アニエスは理由はともかく彼女の意思で行ったんだぞ? 今さら迎えに行っても仕方が無い」

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