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慟哭の痕 第十一話

 俺は、今目の前にいるユリナに対して尋ねたいことが山のようにあったが、その全てを無視した。そして、折れるほどに力を込めて杖を握りしめ呪文を唱えた。

 テールローターを強制的に止めてやる。どうせユリナとその愉快な仲間たちだ。墜落したくらいでは死なないだろう。

 テールローターの辺りめがけて思い切り横風を起こした。するとエンジンから黒い煙が上がり始めた。


「テールローターの回転が低下してるだァ!? 何やってんだ! クソザコ鰥夫魔法使いの魔法になんか負けんなよ! うおぁああああ、揺れる揺れる! しっかりやれー! だあははは! 愉快愉快! そーれ、ハッスルハッスルゥ!」


 ヘリを落とすつもりで唱えた魔法は効果的なようだ。ユリナが操縦席に怒鳴り散らしている。


「イズミ殿、申し訳ない」と横から聞き慣れたバスバリトンの声が聞こえたので、そちらを横目で見るとウィンストンがいた。

 テールローターが弱まりメインローターの回転に負け始めて尻を左右に振り始めたヘリを、何食わぬ顔をしながら目で追っている。


「今日はお休みと伺っております。

 衛生兵としてなかなか過酷な日々を送っていられるようで、休息は貴重でしょうな。

 そのお休みの早朝から騒ぎ立てて、怒るのは尤もですが、アレを落とすのは止めてはいただけませんかな?

 予算の使い方で夫婦喧嘩を見せられる使用人の気持ちも察していただけるとありがたい」


 ウィンストンはやや諦めたかのような声と表情でそう言った。


「ウィンストンさん、ああいうのはいったん懲らしめた方が良いんですよ。

 予算の使い方が夫婦喧嘩で収まるなら、それでいいじゃないですか。どうせ死なないんだし、墜としますね」と俺はさらに杖を強く握りしめた。


「奥方はその程度では変わりませんぞ。本日はお話がありお伺い致しました」


「こちとら寝起きで聞く気もないんですよ。オマケに寝不足ときたもんですんで。あなたから手短にお願いします。どうせ大したことない話なんでしょうし、アレを落としながら聞きます」

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