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巨塔嗤う 最終話

「マルタンの亡命政府でテロが頻発と言う内容から段階的に報道させよう。

 皇帝関連の記事を出しそうなところだが、皇帝の内容はタブー視される傾向がある。いきなり報道されることもなかろう。

 しかし、以前、皇帝末裔の出現には徹底的な報道管制をかけた。その抑圧を解放する為に箍が外れる可能性もあるので、もちろん管制は敷く。

 亡命政府が皇帝擁立などと知られば、何をされるか分かったものではない。政治的スキャンダルを絡めたことを報道させれば彼らも満足いくだろ。

 確か、先月、人間に造幣機械を秘密裡に売った金融省の職員にいたな。魔石カルテルの内側で主導権を持っていた企業取締役の身内だったか」


「いたなぁ。シロークはすったもんだの大慌てで、対応で一週間くらい帰れないって悲鳴上げてたぜ。

 だが、調査の結果、売られた機械は帝政の頃に使用されていたもので、現在共和国で使用されている紙幣は技術的に刷れないんだってな」


「ではまず、その職員の身辺を洗い、女性関係の問題を探らせよう。献金問題よりも色が付いている方がより衆目が集まる。

 まずはタブロイド紙でスクープとして取り上げさせ、下品な見出しで記事を書かせよう。

 その後に、スピーク・レポブリカやザ・ルーアなどの全国紙で大々的に取り上げれば、大衆はますます興味を示す。メディアも売れれば興味を示すだろう。

 それから機械が売られたことを報道させればいい。古い機械であることは黙ってな」


「やり方がエグいねぇ。にしても馬鹿に協力的じゃないか。あんたは帝政系の思想だから諸手を叩いて亡命政府を歓迎するとか言うと思ったぜ」


「私は帝政思想(ルアニサム)ではない。帝政原理思想(ネルアニサム)だ。

 議会は共和主義和平派のものになり、抱えている多少の国際不安も民衆の気を適度に引き締めるのはちょうど良い。

 こんにちのルーアは、歴代最も平和だと思わんのかね? 世論は共和主義への賛同が多数派だ。

 ルーア、ブラーハと旧体制を声高に賛美して、罷免などされては困るのでな。

 ましてや、フェルタロス家の末裔が皇帝になろうとも言う大事な時期にな。

 この書類は預からせて貰う。何やら気になることも書かれているようでな」


 右手を挙げてそれに返事をし、空の書類ケースも手渡した。


「それにしても、選挙のない時期で良かったな」


 マゼルソンがケースに書類を入れながら、目を合わさずに「それはお互い様ではないか。だが、選挙は他所が戦争中の方がいいぞ。国民は総出で保守に走る。政権交代は起きづらいからな」と言った。


 そして、私とマゼルソンは心底冷たい笑い声を上げ合った。

 笑い声は高く大きく響き渡り、櫓の下の兵士や警備隊員たちにも聞こえていたのだろうか。彼らは動きを止めると不気味なものを見るような視線で私たちを見つめていた。

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