表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1303/1860

巨塔嗤う 第六話

 椅子の横に置いていた鞄から書類ケースを取りだした。綴じ紐をくるくる外して書類の束を取り出し、マゼルソンに渡した。


「丁度ここに来る前に書類を貰った。テロリストが活性化した理由はもう分かってるぞ。対外情報作戦局の成果だ。ま、必要以上に調べるおたくは知ってる情報かもな」


 レヴィアタン、というよりも、特定に限らず潜在する難民エルフ系テロリスト全てを活性化させる方法をクロエに教えた張本人は他でもないこの私なのだが。

 個人でクロエに会い、そこで“紅の魔(レッドヘックス)女皇帝(・ジーシャス)計画”を実行させるべく教えたのだ。

 その見返りとして計画で予定されていることを全て聞いた。クロエ一人で考えたにしては綿密な計画で感心した。

 さすが連盟政府の組織にしては珍しく能力が高い聖なる虹の橋(イリスとビフレスト)の情報処理部門“蝶番(メテセス)”なだけある。

 私はそれを対外情報作戦局員に直接教えてはいない。得た情報を基にヒントを与え、調べさせた結果が書類に書かれているのである。

 局員は優秀だ。私がクロエから聞いた話通りのものを調べ上げてくれた。

 だが、そんなものはどうでもいい。最終的にアニエスが皇帝であると名乗りさえすれば、あとは全て流れていく。


 マゼルソンは渡された書類に目を落とし、視線を左右に動かしている。

 しばらくそうしたあと、首を曲げてこちらを見ると「どうやら知らない話だな」と呟き、さらに食い入るように書類を見た。

 何行か素早く読み終えると、「……皇帝の擁立の噂が流れているというのか」と視線だけを私に投げ返してきた。


 皇帝復活の噂が流れて混乱の兆しが芽生えると共に、数々の難民エルフ系のテロリストがそれに乗じて自分たちの権利を得る為に活性化した。

 当初、レヴィアタンはそのうちの一つに過ぎなかった。だが、彼らは統一されたモスグリーンの肋骨服をきて仮面を被り、特徴的な名乗り口上と声明を主張した後に堂々とテロを行うという劇場型の犯行で注目を集めていった。

 彼らが非常に高度に組織化されてまとまっているその一方、他のテロリストたちはいくつもの分裂と合流を繰り返していた。

 結果的に統率力の高いレヴィアタンにまとまり始め、彼らが最大勢力となった。

 組織の巨大化と過激化し対応に手をこまねいていたマルタンの亡命政府は、運良くどこかで皇帝の末裔を発見し、同意の下でマルタン入りさせたそうだ。


「近く皇帝として戴冠式、みたいなことをするそうだ。日程はもうひと月もないくらいだったな。資金的なものとかで、宣言だけに留めるみたいだが。紙に書いてあるぞ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ