表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1297/1860

囚われに羊飼いは西へ 最終話

 白面布を取り上げると、束ねられていた長い髪を散らすように首を回した。

 広がる前髪は一部が白くなっていた。私はそれをよく知っている。紛うことなき彼女と彼女の一族の象徴とも言える白い髪だ。


「ポルッカ・ラーヌヤルヴィ。なぜ私のペンを持ってきたのですか?」


「ご託は必要か? 出るぞ」


 しかし、異変は既に察知されていた。魔法が壁に当たったのを検知したのだろう。

 ラビノビッツと同じ格好の者たちがどやどやと白亜牢の中へと押し入り、ラビノビッツの亡骸を見るや否や杖を向けて来たのだ。


「包囲されている。抵抗は無駄だ」


 するとポルッカは突然「レアは錯乱状態だ! 私は裏切り者を捕らえようとしたら魔法をかけられて動けなくされている!」と悲痛な声を上げた。


「ポルッカ、あなたはやはりそちら側ですか!」


 私は咄嗟にポルッカの首に飛びつくように巻き付き、首筋にケーリュケイオンを突きつけた。


「人質に取られたが構わん。まとめて始末しろ!」


「撃たないでくれ! 頼む! 死にたくない! 私はヴァーリの使徒! 戦いの場に命を捧げたいんだ! こんなワケの分からない、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()などでなんか死にたくない!」


 そういうことか!

 ポルッカの言葉の意味を唐突に理解した。その瞬間、回路がつながるような感覚が頭に走った。

 クソのような三文芝居ですね。おっと、口が悪い。ユリナさんが移ったのかしら。


 しかし、ここが本当にサント・プラントンの地下なのかは分からない。

 旧王城の地下には何度も行ったことがあるが、このような空間は知らない。

 私がここに運び込まれたときは目隠しをされていた。しかし、おそらくだが、そのとき誰かの移動魔法を使って放り込まれたわけでは無い。

 移動魔法を使ったときに起こる独特の耳や身体などに与える気圧や温度の急激な変化は感じなかったからだ。

 それはつまり、自分の足で直接向かったと考えることも出来る。


 ならばもし、ポルッカの言葉が本当であれば、何事もなく移動魔法が使える。

 嘘だとすれば、私諸共ポータルに飛び込んでしまえば今度こそ本当の悲鳴を上げるだろう。私もタダでは済まないが。

 悩んでいる暇はない。私は一か八かも考えずに咄嗟に移動魔法を唱え、ポルッカの足下にポータルを開き、そこへ私も飛び込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ