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ギンセンカの根は深く 第七話

「それがどういうことか、分からない君ではあるまいな。

 ユニオンとの友好関係はその足がかりだ。もちろん、ユニオンはパイプ役だけではない。ユニオンが広げようとしている市場と共に我々も進出するのだ。

 ユニオンは経済力・人口・それをまかなえるだけの資源は充分だが、国家としてのシステムとしてはまだ未熟。

 こと金融に関しては、独立宣言をしてからだいぶ経ってやっと中央銀行を立ち上げるというのは遅すぎる。

 まず、キューディラによりユニオンにある支店を完全に同期させて、ユニオン全土の金融取引をタイムラグなくコントロールする。

 共和国とユニオンとの関係性を利用して、我々はユニオンと超大規模な市場である共和国での金融にも関与することが出来る。

 人間とエルフは価値観が違う。金融に対する考え方も違うが、金が物々交換の延長である取引において信頼されているツールとして存在することは何一つ変わらない。

 我々は金融協会として連盟政府成立以前から人間の金融市場に携わってきた。その実績を共和国でも生かしたいのだ」


 そうなると人間・エルフ共有圏全体での金融を動かす中心地となるのは今後ユニオンとなる。

 共有圏は連盟政府の経済圏よりも何倍にも巨大な市場になる。ユニオンには中央銀行が出来たが、出来たばかりの金融機関には荷が重すぎるために、今後ノウハウを持つユニオン支部が大きく関与することになるのは間違いない。

 連盟政府を中心として活動していた101部門よりもユニオン支部の役割が大きくなるということだ。


 私は左遷された先が運良く次世代の中心になった。左遷された先を私が盛り上げていったと言う実績を与えようとしているのか。

 そうなれば、頭取の娘だから、というひいき目の出世をしたと言われることもない。


 つまり、私の異動は左遷ではなく――。


 息づかいまでも静まりかえらせて考え込み始めた私を見た父上は、ここにきてやっと穏やかな笑みを浮かべた。


「君が左遷とされた意味を理解出来たようだな。さすが我が娘だ。私の譲りの聡明さも持ち合わせているようで実に鼻が高い」


 確かに、その話を受けないわけが理由は見つからない。私はハイとも何とも言わなかったが、父上は私が受けることにしたのを理解したようだ。

 大きく頷くと、話を続けた。


「ちなみに、101部門の君も含めた精鋭の武闘派が数十名一緒に行くことになる」


 私の所属している、していた101部門は特殊だ。他部門で職員に欠員が出たときのサポート人員とされているが、それ故にどこの支部にも簡単に入り込めるので、いわゆるどこにでもある諜報部だ。

 サポートということでありとあらゆることが出来なければ務まらない。情報収集能力や戦闘能力などにおいてもそうである。

(私は情報収集には自信が無い。言わずもがな顔に出るからだ。ここに入ったのも半ば父のコネだというのは否定できない)。

 部員たちにも個性があり、やはり武に偏る者は多いのだ。私然り。

 しかし、新通貨発行業務になぜ武闘派が派遣されるのだろうか。


「武闘派……? なぜ武力を行使するような者たちを送るのですか? 新通貨発行事業なら事務処理や情報収集が得意な者を選ぶのが妥当ではないでしょうか?」

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