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ギンセンカの根は深く 第三話

 図らずも眉をしかめてしまった。

 左遷。どういうことだ。何か失敗をした――していないとは言いきれないが、あまりにも話が唐突すぎる。されているならもっと早い段階のはずだ。何故この期に及んでなのだ。


 雲が日光を遮ると部屋の中は些か暗くなった。やがて夏を呼ぶ大雨を連れてくるのだろうか。


「どういうことか具体的な説明をしていただけますか?

 左遷とは不名誉なこと。下の者に託した辞令のみによる通知ではなく、忙しい父上、いや頭取が直々に呼び出してまで言い渡す理由もお聞かせ願えますか?」


 説明を求めてくるのは予め分かっていたように「よかろう」と父上は頷き、椅子を回して外を見た。


「君は現在所属している担当領地欠番部門である101部門から、ユニオン支部への配属となる。

 知っての通り、ユニオンは連盟政府所属時には10~14部門だったが、独立後は統合されてユニオン支部になった。

 近々、ユニオンは新通貨を発行する。最近出来たユニオン中央銀行の意向で急ピッチで行いたいそうだ。

 だが、ユニオン中銀は出来たばかりであり、金融に対する高度な知識を持った人員が少ない。

 当初顧問を務める予定だったミラモンテス氏は、今は亡命政府の件で手一杯であり断られてしまった。

 そこで、君をそちらへ向かわせて手伝わせることにした」


 新通貨を急ピッチで発行するのは市場の混乱を招くのではないだろうか。それとも何か急ピッチで行わなければいけない理由があるのか。

 しかし、それよりもまず目先にすべきことがあるのだ。私は長年勤めていた101部門で多くの仕事を抱えている。

 協会の特殊部門でもあり、協会にメリットをもたらす為の個人的な繋がりや秘密を持つことが多く、誰かに申し送りだけの引き継ぎをすれば済まされることではない。


「承服できかねます。私はまだ101部門でやらなければいけないことがあります」


「では、君はそこに所属して繰り返してきた冒険の中で何を成し遂げた?

 共和国で金融面でのパイプ役を仰せつかりながら、金融省長官の御子息の誘拐未遂。

 北部支部の離反の事実を掴めず、拘束される始末。

 さらに、黄金捜索においては全く成果を得られなかった。金融市場に混乱を招くほどの莫大な黄金が結局無かったのだからいい、と言うわけではない。

 業務の方は問題ないが、任務の方は失敗が続いているではないか」


 父上は首だけをこちらに向けて表情少なげにそう言った。

 言ったとおり、私は失敗を繰り返してきた。しかし、言い訳がましいのは認めるが、その失敗があったこそ進展が見られた事柄がいくつもある。

 そして、私個人のミスによる誘発したものだけではなかった。例えば、


「共和国での私への指示は、人の道に外れるような指示は本部が出したのではないのですか!」


「指示は政府の関係者から出されたものだ。

 君は当時、連盟政府に派遣された金融関係者であり、派遣先からさらに派遣されたのだ。

 そうなってしまうと、もはや協会の手の内には無いに等しい。君の協会内部での処分が甘く済んだのもそのおかげと言えよう。

 しかし、政府側もよもやあのような暴挙に出るとはな。想定外ではあった。

 だが、失態は失態」

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