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彼女が選んだもの 第二十四話

 食事中にキューディラで連絡が入り、次の日は急遽二人揃って非番になった。

 俺の方は効率的かつ効果的な治癒魔法利用の育成が進み人員が揃いつつあったので、一日休暇を言い渡された。

 アニエスの方も指導してきた者の育成も進んで指導者を増やして負担を分散することになったらしい。


 それを聞いてか、アニエスがワインを勧めてきたのだ。

 司令部の倉庫を整理したときにストレルカが見つけ出して、こっそりわけてくれたのを棚の奥に隠していたらしい。


 セシリアの一件の時、俺は暇さえあれば昼から飲んだくれていた。一番近くにいたアニエスはそれを心配していて、アスプルンド博士の話を聞いて以降は飲まないようにしていた。


 アルコール自体が久しぶりであり、気がつけば飲むことに対してあまり積極的ではなくなっていた俺はあまり気が進まなかったが、どうやらアニエスの方が飲みたがっていた。

 一人で飲ませるわけにもいかないので、俺は付き合うことにした。


 久しぶりのアルコールは、喉と食道を焼くような感覚を与え、今身体のどこを流れているか分かるほどだった。

 だが、胃に入ってしまうとその感覚はなくなった。そして、二杯目ともなると以前のような気持ちよさに戻っていった。

 酔いが回ると、二人ともよく喋るようになり、さまざまなことをお互いに話した。

 アニエスは、セシリアが女王になると決めて出て行ってしまったときの俺の顔が酷かったことや、その後セシリアを誘拐したとき俺がカルルさんに切った啖呵の真似をしてからかってきた。

 俺が酔ったおぼつかない手つきで残っていたエープルフラシュクに手を伸ばすのを見ると「ベーコンばっかり食べてるね」と笑ってきた。

「じゃあリンゴだけあげるよ」と言い返してエープルフラシュクを半分に切った。切るのに失敗して、俺の方にばかりリンゴが偏ってしまうと、それを見て彼女はまた笑った。


 俺はもっともっと昔のことを話した。


 初めてブルンベイクでアニエスに会ったときはおぼこい娘だったと笑うと、顔を膨らませて違う違うと否定した。初めて会ったのはブルンベイクではなくて集会のときだと言い返してきた。

 そのあとに、あのときよりもずっとずっといい女になったと言うと、黙り込んだあとに肩を何度も両拳で叩いてきた。


 それからも俺たちは飲み続けた。非番とは言え、呼び出されるかもしれないと言うことを考えなければいけなかったが、酔ってワインの味も分からなくなるにつれて気も緩んでいた。

 どうしてこんなに美味しかったのか。大事な家族との時間はこんなにも暖かいということを思い出していた。

 目の前に座る女性の顔が滲んで見えにくくなる頃には、隠していたワインが二本ほど空いていた。

 見えていたろうそくのオレンジ色に揺れている明かりが真っ暗になったのは、燃え尽きるよりも早かった。

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