彼女が選んだもの 第十四話
だが、候補者として育成された過去があり、なおかつ一等秘書官経験者で地盤がある程度整っている者は一人居る。
前回の選挙で精神的負担に耐えきれずに、全てを暴露した後に立候補を辞退したセルジュ・ギルベールだ。
メンタルが弱いという点は政治家として致命的だが、それさえ克服できれば問題なく長官として務まる相応の実力もある。
一度シバサキに操られた過去があるのは評価としては下がる。だが、メンタルを立て直して再起を目指すというのはサクセスストーリーとしては優秀。
イメージが悪ければ悪いほど、それを払拭できた場合に民衆の評価ポイントたり得る。
メンタルが弱いという性質の裏を返せば、良いヤツでもあるということなのだ。
数回しか会ったことはないが、自信過剰で尊大な性格である一方でメンタルが弱く、悪い奴ではないというのも分かった。
(都合が)良いヤツとしてまた操り人形であることに耐えられるのであれば、クロエの要望には叶う。一方で(誠実な)良いヤツであるが故にまたしても嘘にまみれることに耐えられない可能性も充分に高い。
そういえば、彼は今どこで何をしているのだろうか。ウェストリアンエルフの豪農の次男坊だとかなんとかで、退院して地元に戻ったとか言っていた。
いずれにせよ、ユリナに彼を注視するように促しておこう。
右掌を前に出してクロエの話を促した。
「一方の皇帝を擁立した亡命政府と連盟政府は和平協議を活発化させ、皇帝は完全に和平を推進する立場であるとします。
すると、ゆくゆくは亡命帝政ルーアと連盟政府は和平状態になります。そして、帝政復活の機運にのり共和国は亡命政府を許容し、共和国のまま皇帝の立場を復権させる。
皇帝が間違いの無い形で存在することで共和国内の帝政思想たちは抑えられます」
大雑把であることは認めるが、気になることが多すぎる。いい匂いの立つものばかりに火をくべて、真の目的を煙に巻こうとしているのだろう。
現在共和国と進行している和平交渉はどうするつもりだ。
亡命政府は国土はなくとも実体はある。それを何処に置くのか。このままユニオン領であるマルタンに置き続けるつもりか。
許容後の皇帝の地位について具体性がない。亡命政府の方では絶対権力者だが、共和国での復権後にはどうなるのだ。
俺はセシリアの件で王とその権力機構についてその全てを見てきた。権力が付与されるなら、周りにいる者たちにまでその影響が及ぶ。
だが、あえて何も問わないことにした。こいつが言っていないことは山ほどある。だから俺からも何かを言う必要は無い。
「そんな簡単じゃないだろう。亡命政府が擁立した皇帝がもし、連盟政府との和平に消極的だったら?」




