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彼女が選んだもの 第十三話

「連盟政府の諜報部がなぜ共和国の心配をする?」


 心配などしているわけもない。何が目的だ。


「現在二国間で行われている和平交渉での負担が大きいのは共和国側だけではないのですよ。あちらの国内を平らに治めて本腰で挑んでいただきたいのですよ。

 ご存じの通り、交渉は停滞していますが、十三采領弁務官理事会が離反等により新陳代謝が進み、共和国のエルフたちとの協調路線への模索を再びしようと訴える者の参加がありまして。

 その点において、離反での唯一の利点でしょうね」


 嘘つけ。少し前の情報だが、進展など全くなく今後も前進する可能性は低いとカミュから聞いている。


 クロエは微笑んだ。こいつがいくら諜報部員であってもこれだけ顔を突き合わせればクセも見抜ける。こいつの狂気の孕んでいない笑顔は嘘まみれだ。


「そいつぁ、ご苦労ですな。北公とルスラニアにケツを蹴られて焦ってんのか。

 だが、話はそれで終わりじゃないよな? 共和制と帝政、どうやって平らに収めて貰うんだ?

 そこまで言うからには徹底的に干渉するんだろ?

 まさか相手次第でそっちが何にも考えてないとかじゃないよな? 黄金捜索の時みたいに焚きつけろよ」


「ええ、もちろんです」とクロエはやたらと皺を寄せて笑顔にしては不快な表情を見せた。今度は嘘ではなく、考えはあるようだ。


「ルーア皇帝の居場所はもはや地上にはない、と言うわけではなくなりました。それどころか、玉座を構えるにとても相応しいところがあります。そう。最近出来たばかりの」


「マルタン、そこの亡命政府か」


 被せるように言うと、クロエは表情を変えずに深く頷いた。


「現在、皇帝を擁立しやすい環境が整っております。

 まずマルタンの亡命政府で皇帝を擁立していただきます。国璽など煩雑なものは必要ありません。皇帝その者が国璽のようなものですから。

 その後、共和国での次期政省長官選挙候補者に帝位復活支持者を立候補させて当選させます。

 もちろんですが、当選するまでは帝政復活支持者であることを隠します。でないと、市中警備隊に御用になってしまうので。

 当選後に――、ああ、当選させる方法はあなた方がシローク・ギンスブルグ金融省長官に当選させたときと方法は同じですね。紙とインクの最も単純で困難な魔法を使います。

 当選後に、共和国世論で帝政復活の気運を高めていきます」


 政省長官は現在空席で、政治的空白を作らない為にマゼルソン法律省長官が兼任している。選挙を執り行おうとすればいつでもできるのだ。

 マゼルソンの手腕は素晴らしく、現時点でも問題なく回っている。


 しかし、法律省長官の一等秘書官はいるものの政省長官としての一等秘書官はいない。つまり、候補者の育成が行われていないのだ。

 マゼルソンの一等秘書官は法律省所属であり、法律省は帝政の頃からの名残のある独特な雰囲気でまとまっていて非常に彼寄りで、ポストマゼルソンとしての色合いが強く政省長官として名乗るつもりはない。


 そして、ある程度盤石な地盤がなければ、どれほど買収をしたところで票は集まらない。

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