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幕間の対話 第五話

「さぁね。『最強チートな状態で世界を救って美少女魔王と悪役令嬢を反省させておとしたあとに田舎でスローライフを始めて、最強だってバレないように目立たずこっそり地味に慎ましく穏やかに静々と普通に暮らしてたんだけど、なんか知らないうちに国王様とかの尊敬集めちゃって気がついたらハーレムになっちゃいました、最強の僕』みたいなことしたいんじゃないの?


 因みに、かっこつけようとして名前も言わずに村を去った場合、村人は一日でその半分を忘れて、一週間で七十五パーセント忘れて、一ヶ月後には八十パーセント忘れるわ。

 それでも覚えてるのは記憶じゃなくて、素晴らしいことをしてくれたという記憶によって良い方に補正がかかった完全な物語。

 のこのこ戻ってきたら偶像とのギャップに絶望されるヤツ。旅人は忘れられていく存在なのよ。英雄死若くして後世に無き偉業広める」


「だから記念碑を作る、のか」


 俺たちがセシリアの墓を作ったように。


「そのまんまの記念碑なんか作っても誰も喜ばないわねー。

 イケメンか美少女か、はたまた巨人か豪傑か。小石は山脈に。水たまりは海に。実際にしたことと誇張されたことを如何にもしそうな姿に変えられるわね。

 ヒトは理性を手にしたことで忘れられることを極端に嫌がるようになった。だから、自ら魂を作りだした。

 でも、誰よりも自己を優先させて保存する為にそれに価値を与えすぎたのよ。

 目には見えない意識の集合のせいで、まるで魂には無限の価値があるように言われているの。でもね、魂も結局イチとゼロ。

 イチであれば世界にその器をとどめておける。ゼロになれば、その器は崩れて消えていくの。ゼロはイチに、イチはゼロに。

 でも、ゼロから生まれるイチは完全なイチではない。だから、無限に繰り返しそうなそれもやがてはゼロすらない無になるだけよ。

 あんたの回復魔法も実はエントロピーの見せかけの減少であり、増大の一部でしかないの。

 回復魔法で戻っていく。じゃあ戻っていくところにいたはずの存在はどこにいたの? それはその瞬間にいたはずの相手を対消滅させているのよ。つまり元からいなかったことになるわけ。

 物体は散らばって拡散する。それを他から強制的にかき集めてるだけ。世界を構成する点や線はどこまでも小さくしてしまえば何も変わらない。

 身体から分子のレベルで何かが消えてもいきなり死んだりしないでしょう?

 そしてそこからエントロピーの増大再開ってことよ。だから、見せかけは結果の否定ってワケ。あの子、あげるだけあげて何にも教えなかったのかしらー」


「あんた、愛の女神のくせに愛も夢もないこと言うんだな。俺の頭が悪すぎて話しても仕方ないと思ったんだろ。実際わかんねーし」


「あんまり深く考えないでいいわよ。

 時間の逆行なんて存在しない。その程度の話。

 そもそも、時間も人間が豊かさの為に作り出した架空の物だもの。元々ありもしないものをどうやって否定するのかしら。

 人間は豊かさのために何かを作り出し、それを独り占めする為に意識で認識したものを何でも不平等にする。

 この世でまだ平等な物は、人間が知らない物だけね」


「要するに、俺の力は人間の手には余るもんだってことは変わらないんだな。じゃあ、これからも使わないだけだ」


「あんたは何を言いたいんだ? 何のために俺をここへ呼んだ? 俺はあんたの暇つぶしの禅問答をする為に呼ばれたのか?」


「あなたはシバサキより面白いわぁー。

 ただぶっ壊すだけじゃないし、なんかチートあっても使わないで縛りプレイみたいなのしてるし。

 そうなると上げたくなるのが性よねー。やっぱり何か欲しくなーい?

 いんや、絶対あげちゃうわぁ。何なら生き返らせるなんてこともぉ?」

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