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見守る者 第二話

 手持ち無沙汰に灰色の軍服の袖に付いた新国旗ワッペンを弄くった。

 ルスラニア王国の国旗は、ビラ・ホラを囲み極地の極寒の風から守ってくれる霊峰の上に導き星(スプートニク)が描かれている。

 ブルゼイ族の象徴でありながら部族内差別の象徴でもあるトンボはモチーフとしては使用されないことになった。

 王国と言うことで、シンプルな国旗というよりも王家の紋章のようにやたらと細かくゴテゴテとした絵で作られている。紋章記述(ブレイズン)だか何だかもあるらしいが、あまり興味が無い。


 刺繍してあるワッペンと同じ色の紐が一本ほつれて飛び出してしまった。どうやらワッペンをいじり過ぎてしまったようだ。

 ほつれ糸を引きちぎろうと引っ張ったら、どんどん伸びてしまった。ワッペンごと取れてしまうのは面倒なので、いじるのはやめにした。

 だが、再び手持ち無沙汰になると再び部屋の泣き声に意識が向かってしまう。それが不愉快だった。


「あぁ、なんだ」


 オレはそれを紛らわすようにストレルカに話しかけた。


「看取らなくていいのかい? ありゃオレたちの女王様だぜ?」


 尋ねると壁のストレルカはゆっくり目を開けて顔を向けてきた。


「アタシらなんざ邪魔でしかないよ。なにせ元誘拐犯だからなァ。女王様である前に、あいつら二人の娘なんだよ」


「そらー、まぁ、そう、だよなぁ」と会話が途切れてしまう様な返事をした。何か無いかと無理矢理話題を引き出した。


「これから閣下はどうするつもりなんだろうなぁ」


「言いたかないが、織り込み済みだそうだ。

 セシリアは遅かれ早かれ、のつもりで計画を進めている。思ったよりは早かったらしいが。

 タマの一発も食らってない、綺麗な秘密の姫君は戦争中に死亡。

 ブルゼイ族とスヴェンニーの紛争和解でふにゃけた幹部連中は弔いだとかナントカでイキリ立つだろうね。

 兵隊さんらはそうたァ知らずに女王の為に分離だ独立だって銃持って鼠と虱とクソまみれの塹壕走り回るのか」


 と言いながら空中で左手を構え、右手を顎の前で握り銃を構えるような仕草をした。引き金を引くと、「ぱぁん」と小さく口をならした。


「ブルゼイもいよいよ連盟政府と北公のおっぱじめたくだらない戦争に本格的に参加するのか……」


 オレは椅子の背もたれに頭をつけた。

 ストレルカはチラリとオレを見た後「正式にはまだ戦争とは言わないらしい。まァ前線で兵隊さんが敵をブチ殺すのは一緒で、誰が認めればそうなるのかなんざ知ったこっちゃねェけど」と手を叩いた。


「悪いことばかりでもないじゃないか。

 カルルとか言うおっさんはアタシらにメシと服と立場をくれた。散開していたブルゼイ族も正統、下位関係なく集まり、全員に戸籍が与えられた。

 ありがたいこった。

 少々手荒な手段で雇用を促進させているが、みんな前よかまっとうな仕事に就けている。今のところ、ほとんど全員が肉体労働者か軍人だがな。

 おまけに国も出来た。文句は言えないね」

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