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大熊と魔王 第二十三話

「これは狭量なことだ。あなたは賢い方だと話をしていて思っていたのだが。

 ではこちらから流れてしまった銃はどうするのかね?

 確かに、元はあなた方共和国の作りだした物でありオリジンを主張するつもりは無いが、命中精度の向上といった性能には改良と言って差し支えないほどの変化がある。

 あなた方に北公の技術が流出したと言っても間違いにはならない」


 ユリナは言葉に舌打ちをすると腕を組み、右の方へと視線を逸らした。


「それこそが今まさに起きている問題なんだよ。実はなぁ、取引はもうすでに成立していねぇんだよ」


「どういうことだ?」とカルルさんは両掌を前に突き出し困惑した表情を浮かべた。


「我々は既に商会に銃を渡している。あなた方の手元に渡っているなら成立しているはずだが?」


 ユリナはカルルさんをしげしげと覗き込むと「やっぱ知らねぇか」と呟いた。


「実は私ら共和国は商会から未だに銃を預かっていない。そして、商会を含めた連盟政府は何にも言ってこない。

 取引の話合い以降、顔の利くイズミに連絡を任せてたが、そのイズミも最近まで共和国と商会の取引について存在すら知らなかった。


 ま、要するに、商会は銃を持ってとんずらこいたってことだ。私らは仲良く騙されたんだよ。さしずめ、北公がビラ・ホラに到達して硝石需要が見込めなくなったから、手ェ引っ込めたんだろ。

 銃が無ければ話は進まない。銃が今手元にある自分らにこそ取引の主導権があるとでも勘違いして、思い通りに行かないからって知らん顔してやんだ。

 しかも、まともな取引ではないから表だって取引が成立してなんざ声高に言えないのをいいことに、調子こいてやがる。

 クソさ加減にもほどがあると思わねぇか? 一回徹底的にブッ潰して矯正したほうがいいだろ。

 ここで私とアンタが会って仲良くお話しましたって明日の朝刊見たら発狂するんじゃねぇの? ハッ」


「なんと」とカルルさんは仰け反るように驚いた表情を見せた。

 驚いたのはカルルさんだけではない。俺もそれを初めて聞いたのだ。

 先日、ギンスブルグ邸で火薬の話が出たときのユリナの不機嫌はこれが原因だったのだ。彼女にとってはこれが本題なのだろう。

 だが、それよりもそのアスプルンド零年式二十二口径雷管式銃はどこへ消えたのか――。


「信用を売り物にしている彼らにしては随分と危険なことをしているな」


「信用が売り物か。あいつらは信用とか信頼とかっていう単語を口にしない。

 言葉の持つ意味を大事にするためだたぁよく言っているが、実のところそうじゃねぇんだよ。自分たちの行動の安全確保でしかない。いつ如何なる状況でも掌を返せるようにする為のな。

 反故にされた側が信頼だのと言い出せば、言葉にしてはいけないそれは言うほどに減りますよ、とか、本当の信頼が築かれていれば言葉にする必要はないのですよ、とかご託並べ出すんだ」


「さながら、信頼という名の悪魔の証明だな。

 我々は当初連盟政府に流れることを想定し、さらに模倣品が出回る前に戦いを収束させる予定で動いていた。

 共和国に流れた可能性があるというのも把握していたが、我々は予定より早く硝石鉱床を確保出来たので、当初の予定通りに戦いを迅速終わらせる予定に変更はなかった。

 しかし、全て予定通りであり、既に商品を手放したのでもはや関係ない、と言うことには行かなくなったようだな。

 そちらはどうするつもりだ? 商会と取引をすると契約した時点で、もはや無関係ではないだろう」


「さぁなぁ、どうなることやら。あの間者一族は何か言ってたか?」

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