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大熊と魔王 第二十話

「考えることと教育は並べられることがしばしばあるが、教育は集団に同一の知識を与えると共に知識で縛り付け、画一的に思考停止にさせるものだ。

 それに考えること自体を教えるのは教育じゃない。教育を施せば何も考えずに思想に従うように出来る。

 だが、教育は教育。限界がある。では必要ないかと言えばそうではない。

 知識を与える教育が必要であることはもちろん間違いはなく、最低限の知識とは思考のためのツールだ。

 そして、学びは興味によって広がる。そこでエンタメを使うんだよ。

 自分たちで考えた結果、自らが手に取ったそれにより思想を染めていく。

 時間はかかるが、自らが考えて選び抜いたものにより得た思想は、簡単に変えることは不可能だ。

 歪めようと強いれば、それは自らの思考を否定するのと同等になるからな」


 ユリナの言葉にカルルさんはこれまでに無いほどに嫌悪を顔に浮かべている。

 彼女の考え方・やり方は頼もしいと言えばそうだが、一歩間違えれば衆愚政治に繋がりかねない。あまり賛同できないのはカルルさんも同じようだ。

 ユリナはカルルさんのしかめた顔を見上げると、片眉を上げた。


「操るのがイヤか? だが、政治ってのはそう言うもんだ。

 私腹保身私利私欲の為に操るのはクソ以下だが、国家の為にするのは問題がないと私は考えている。

 回り回った結果、自国民を豊かに出来るんだからな」


 カルルさんは表情を変えずに黙ったままだった。ユリナは反応を見ると、「どうやら」と首をぐるりと回した。


「甘いのはストレルカだけじゃねぇようだな。

 人間内部に明確な他国が出来た、これから出来ていく時代が訪れた。おそらく分裂はもう止まらない。

 友好国なんてツラをぶら下げていても他所であることに変わりは無いんだ。先に独立したユニオンなんか、平和主義のツラを被った空腹の肉食動物(人食いアホウドリ)だぜ。

 いつまで優しい偉大な領主様でいるつもりじゃあっという間に食われるぞ。独立したなら目ェ覚ませ。

 あんたの二つ名、北の大熊ってのは飾りなのかい? 私は真冬の森で冬眠に失敗した熊に襲われたことがある。早雪に暴れた熊ってのは凶暴なんじゃないのかい?」


 ユリナの強烈な思想に黙り込んでいたカルルさんは喉を鳴らすように唸ると、「あなたはどうやら指導者としては強すぎるようだな」とゆっくりと言葉を選ぶように口を開き、


「もはや、初対面の時のただの若い女性には見えない。容貌魁偉、魁梧奇偉、あなたは身も心もさながら魔王だ。人間側のプロパガンダも強ち間違いではなかったのかもしれないな」


 と軽蔑ではなく、畏怖をこめてそう言ったのだ。


 ユリナは怒ることなく、「ソイツはどうも」と冷静に答えた。まるで自らが魔王であると言われるのは当たり前のような反応だ。

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