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大熊と魔王 第十三話

 それにカルルさんは驚いたように眉を上げた。

 次第に表情を曇らせていき、困った顔になりそうになった瞬間、


「私はルーア共和国、軍部省長官ユリナ・イクルミ・ギンスブルグだ。第二スヴェリア公民連邦国総統閣下、カルル・ベスパロワ。初めまして、ごきげんよう」


 とユリナは落ち着いた声で付け加えた。

 まるでユリナが自分のペースに持ち込む為に反応を見計らったようだ。


「あ、ああ、こちらこそ初めまして」とカルルさんがあっけにとられたような返事をし、

「私は第二スヴェリア公民連邦国総統およびルスラニア王国暫定政府執政官代行カルル・ベスパロワだ。長い名乗り口上は旧体制のようで好きではないのだが、よろしく頼もう」

 と言いながらさらに一歩近づいた。


「よろしく」と促すようにユリナは差し出した右手を揺らし、握手を促した。


「エノクミア語も流暢だとはな。翻訳係は不要であると事前に聞いていたが、ルフィアニア語での挨拶されたときはどうしたものかと思った。

 北公にいる者でルフィアニア語を話せる者はムーバリ准将とイズミ君ぐらいだからな」


 カルルさんは言いながらユリナの右手を掴んだ。


「片方はガチモノ内通者で、もう片方は自称平和の使者だろ。どっちもやることはスパイみたいなもんじゃないか。

 わかんねー言葉で侮辱したとかピーコラ言わずにすぐに挨拶だって分かるんなら、あんたも実はそれなりに話せるんだろ。

 でなけりゃ難民エルフの受け入れなんざしない。さすが元領主なだけあって学はあるようだな」


「難民エルフは地理的に人間より扱いやすい。戸籍を与えるときの調査が人間より少ないのでな」


「おっとっとぉ、それ問題発言じゃねーの? 聞かなかったことにしてやるよ。それにしても、あいつぁまーた出世したのか。それにくらべてイズミときたら……」


 ユリナは俺をちらりと見て口をへの字に曲げてため息を溢した。

 俺は何か口を挟んではいけないような気がしていたので、腹は立ったが何も言わず、心の中で「悪かったな、クソが」と悪態をつくだけにした。


「ムーバリ准将はよく働いてくれる。それは共和国軍でもそうではないのか?」


「生憎とヤツは別の長官の精兵でね。ツラが割れ始めてもいるってこたぁ、まだ現役なんだろ」と言いながらムーバリをぎろりと睨んだ。

 ムーバリはいつも通りの糸目の笑顔で会釈をして返していた。


「イズミ君はイズミ君で所属を曖昧にしているところはあるが、我々に対して出来ることはしてくれている。

 彼の性格的なものを利用しているところもあるが、よく動いてくれる。

 それに立場上、あまり地位をつけられないのだ。悪くは言わないでいただきたい」


 遅いフォローをしてくれたカルルさんはセシリアをちらりと見て、両眉を上げた。

 ユリナは、おう、と小さな声で答えただけだった。

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