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大熊と魔王 第二話

「これは……イズミ殿のおっしゃるとおり、アサガオですな」


 ウィンストンはアイルーペを付けてガラスシャーレの上に転がっている三粒をまじまじと見つめながら、そう言った。

 見覚えのある種はやはりアサガオだった。昔、甥っ子が小学生の時に持ってきて、俺に育てろと置いてった物に似ていたので、そうではないだろうかと思っていた。

 アサガオは頑丈でよく育つし花もたくさん咲く。その様子をセシリアに見せたいと思った。


 つまらなそうにしているセシリアが繋いでいた手を大きく揺すり遊び始めたので、頭に手を載せて指先で撫でるようにしながら「寒いところでも育てられますか?」と尋ねた。


 ウィンストンは「育てるおつもりですか」とちらりとセシリアの様子を窺った。そして、ふむと鼻を鳴らすと「実に良いでしょうな」と大きく頷き、再び種を見始めた。


「気温が常に二十度以上あり、地温が十九度以下にならなければ芽は出るでしょうな。

 ノルデンヴィズはどうでしょうな。育てられないことはないかもしれませんが、もう少し季節が進んでから良いでしょう。


 おそらく、これは蔓の勢いもあるでしょう。ある程度大きく育ってしまえば霜が降りるまでは花が繰り返し咲く。その後も地上部が枯れても、根は残って翌年芽を出すでしょう。

 一般的にアサガオは一年草と言われていますが、この種類は越冬できれば多年草ですぞ。

 冬越しは零度以下にしたり、霜が降りないようにしたり、きちんと手を打てば根だけで出来ますぞ。

 色々と条件はありますが、うまく越して気温がまた上がれば再び芽は出くるでしょう」


 ノルデンヴィズは冷え込むのが比較的早い。クライナ・シーニャトチカでも厳しい。

 ビラ・ホラは一度訪れた感じでは温泉もあり暖かい。だが、土地が痩せ衰えている。ビラ・ホラでも育てたいというなら、まずは種を増やしてからの方が良い。

 まずは確実に育つところでセシリアに花を見せてあげたい。

 いっそ、ユニオンのあの屋敷の庭でこっそり育ててしまおうか。あそこなら年中温かいし、冬場も早雪になったとしても氷点下を下回ることはない。いざとなれば、か。

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