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大熊と魔王 第一話

「ベルカとストレルカ、出かけるぞ。付いてこい。監視だろ?」


 窓を開けて呼びかけると、窓の近くにはストレルカがいて、少し離れたところでベルカが振りかぶっていた。


「おーう、いいぞー。何処行くんだ? アタシらの好きなところが良いなァ。暖かくて、メシがうまくてェ、おっと」


 ベルカが右足を大きく前に踏み込み腰を軸に大きく右手を前に出すと、ストレルカがひょいと身体を避けた。


「だぁぁぁ、おいおい避けろ! イズミ!」とベルカの声がすると同時に目の前に白い塊が飛んできた。


 こいつら、監視が仕事のハズだが、俺たちに逃げ出す意思がないと分かるや否や暇を持て余し、雪合戦始めやがった。これで給料貰ってやがるのか。

 外で監視させるわけにも行かないから家の中に入れてやったのに「ちょっと外にいらぁ」とか言ってこのザマかよ。


 少し溶けて湿った重い雪玉で顔が突然冷やされて、突っ張るような痛みと呑気な二入組にむかっ腹をひくつかせながら顔に付いた雪を払った。

 ベルカが遠くの方で「わりぃわりぃ、へへっへ」と頭を掻いている。

 それを睨みつけるようにしながら「よかったな。暖かくてメシがうまいパラダイスみたいなところだ。お前らの大好きなところだ」と言うと、「ヒャッホーウ、ベルカ支度しろ! 経費でまたうまいメシが食えるぞ!」とストレルカは歓喜の声を雪山に響かせて、拳を振り上げた。


「ほう、そうか、そうか。うれしいか。それは俺も良かった」


 すぐさま続けて「共和国のギンスブルグの家だ。ユリナの家だよ。エケル通貨の領収書は落ちるか知らんが、良かったな」と嫌味交じりに言うと、二人ともギョッとして固まった。

 ストレルカは特に身体を仰け反らせ歯をむき出しにして嫌悪を浮かべていた。


「な、何しに行くんだ? それ急ぎか? 戦争か?」とベルカが口角を引きつらせながら尋ねてきた。


「違う。調べて貰いたい植物があるんだよ。それに詳しい人のところだ」


「そう、そうかァー。アタシゃあんまり行きたくないねェ。お前らだけで行ってこいよォ」


「ダメだ。来い。仕事しろ。雪合戦してたのカルルさんにチクるぞ。それに不測の事態ってのはだいたいそう言う目を離したときに起きるんだよ」


 ベルカは「オ、オレたちゃお前ら信用してるぜ。お前ら三人は、絶対無事に帰ってくる。何にも起きないさ」と親指を立てウィンクをしてきた。


「信頼を盾にすんな。それに何か起きるみたいなフラグ立てんな」と首を左右に振ったが、どうしても行きたくないようだ。

 眉をハの字にして下唇をむき出しの先ほどよりも強烈に嫌そうな顔をした。あまりの顔にため息が出てしまった。


「大丈夫だって。心配すんなよ。忙しいから会わないだろ。たぶん」 誰にとは言わないが。


 まだ引きつった顔のままのストレルカを無視して「準備して外でポータルを開く。お前らも準備して待ってろ。あっちは多分ここより暖かいから、上着は家ん中置いてけ」と言って窓を閉めた。


 移動中にベルカとストレルカにも種を見せてみたが、やはり分からないらしい。

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