北の留鳥は信天翁と共に 第三十一話
社会基盤が整い、政治中枢が動き出し、新国名が決まり、王室が据えられ、その他、国としてあるべきものが全てが決まってから、第二スヴェリア公民連邦国はルスラニア王国を新たに作られる国家共同体に加えることを会議で決定した。
その後に、まずブルゼイ族はルスラニア王国についてを世界に向けて発信した。
“ブルゼイ族はかつてのブルゼリア王家の末裔である女王セシリアを中心とした新たな国家、ルスラニア王国としてまとまり新たな一歩を踏み出すことになった。
二百年の長きにわたりその血統を絶やすこと無く伝え続けるのは、人の手ではない何か大いなる存在の意思に因るところを無視することが出来ない。
神に祝福された女王を象徴とし、ルスラニアは大きく恒久的に発展していくだろう。……”
その後に新興国ルスラニア王国の幹部たちの名前と北公幹部たちが共同で
“ブルゼイ族は新たにルスラニア王国を建国。連盟政府には加盟せず、第二スヴェリア公民連邦国(北公)が中心となり新たに形成した共同体へ加盟申請。国力を認められ加盟を許諾された。
また、共同体加盟の条件として北公へビラ・ホラの硝石鉱床採掘権を譲渡した。”
と世間へと公表した。
そして、第二スヴェリア公民連邦国とルスラニアとの共同体機構は、北部辺境社会共同体と名付けられることになった。
共同体として共に歩む上での支援については
“ルスラニア臣民への教育が進み、識字率の向上、衛生面での改善、完全失業率が五パーセント未満になり、ルスラニアの首都が明確に定められるまで”
と限定的な期間が設けられた。
だが、“いつまで”という具体的な期日は定められなかった。
教育基準も北公で行われている要項が採用され、何語の識字率なのか、首都のない国家(国家機能中枢はノルデンヴィズ基地内部に設置されたルスラニア公使館にあり、臨時王宮もそこにある)であること、様々なことをぼやかしていた。
仕方がないと言えばそうなのだが、気になるところが全くないわけではない。
傀儡国家という印象を回避するために、北公による支援で国家が出来たことは言わず、あくまで別国家であること、さらに硝石鉱床の採掘権譲渡は独立後であり、共同体加盟の条件であることを強く主張した。
実際のところ、中枢の人事は北公が行い、宛てられた人材はほぼ北公の者であり、傀儡であることに変わりは無い。
だが、ルスラニア王国は未熟であり、北公の支援なくしては今後の発展は見込めず、当面の間は北公の庇護下に置かれるのは仕方ないのではないかとも思った。




