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北の留鳥は信天翁と共に 第二十五話

 先日の会食以降、北公とユニオンの話合いは気を良くしたルカスのおかげで流れるように進んだ。


 二回目以降、正確には公式な交渉が始まって以降、俺はただの足となり正式な特使が頻繁に送られるようになった。


 話合いの戦端を開くと言う立場では俺のしたことは成功であり、無礼講( のつもり)で酔い潰れていたのも悪くなかったのではないかと思いつつも、なぜルカスの気が良くなったのか、そこに楽しく食べて飲んで騒いだだけではない理由がちらつくような気がしてならなかった。

 帰り際に会ったラウラと何かあったのではないかと俺は罪悪感しか覚えなかった。


 北公の外交部との交渉では、俺との会食の際と同じようにユニオン側はまず海上輸送というカードを切ってきた。

 だが、北公側が鉄道がいいというと、分かっていたかのようにすぐにそれを承諾した。

 ユニオンはさらに鉄道利用はどういう風に行うのかと、北公側が鉄道について既に知っていることを前提で様々な説明を省いて尋ねていた。


 その話合いの前に、鉄道についてアスプルンド博士に会議で提案したときよりもさらに詳しい説明を予めしておいた。

 彼はすぐに理解してその利便性についてカルルさんに報告し、その後には話合いに参加する幹部クラス全員には伝わっていた。(遠い耳に聞こえるように何度も大声をゾウ耳に繰り返すことには苦労した。届けば理解は早いのだが、結局手間は同じだったかもしれない)。


 ユニオンは鉄道技術供与に関してはとても前向きであった。

 その見返りとして――未来への投資のあくまで前金的な――、カミーユ・ヴィトーの捕虜奪取については両国間で完全解決とし以後の協議はしないこと、幾多の混乱によりストップしていたカルデロンとの海上交易の再開、さらに海面に接する地域に新たに港を作り、交易のこれまで以上の拡充を求めてきた。


 順調そうに思えたが、そこで問題が発生した。

 カミュの件と交易再開は合意に至った。しかし、港の建設に対して、第二スヴェリア公民連邦国やブルゼイ族の新たな国家において、ユニオンのような重商主義国家を目指していないのでカルルさんは渋ったのだ。

 ユニオンとの交易が始まれば、トバイアス・ザカライア商会と切れたにもかかわらず再び荒れ狂う商業の波が押し寄せてくるのは間違いないからだ。


 渋った理由はそれだけではない。

 予算ややる気のある労働力には溢れているが、作り上げた港に今後に見合うだけの価値があるかどうなのか、作ったはいいが使う機会があまりなく寒冷地もしくは極地であるために施設の維持費や人件費ばかりかさむのではないかという意見もあった。

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