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北の留鳥は信天翁と共に 第二十話

「船については、どうなんだ? 北公は北海にも面している」


「早雪、いえ冬には海が凍ります」


「暫定的な領地から考えれば不凍港もあるだろうに。カルデロンには本格的な砕氷船もあるぞ。

 それに普通の船も木造でもあるまい。トルクが弱い船も少なくないが、輸送船ともなれば重量がある。

 ピッチングやローリングで船体ごと氷に乗り上げて割れば良い。

 我々は海の覇者。時には穏やかで時には荒れ狂う海と何百年向き合ってきたか。どの船も早雪や流氷如きで物流を停滞させないように作っているのだから、その程度には充分頑丈だ。

 物流が内陸であったとしても、大きな河川はいくつかあったはずだ。手間かもしれないが、港湾での乗り継ぎをすれば船でも充分だ。乗り継ぎを効率的に行う技術もある」


 黙るのはよくない。ビラ・ホラについて自分から言うわけにはいかないのだ。それは、と言いながら天井や窓を見て言葉を探した。

 だが、ルカスは容赦なく質問をぶつけてきた。


「で、その“大量の物”とは何だ?」


 口をかけたまま、あ、と息を吐き出すだけの返事になってしまった。ついに黙り込んでしまった。

 そこへティルナが「硝石でしょうね」と言った。


「大統領、意地悪ですよ。話が進みません。

 イズミさんたちはビラ・ホラへと到達をした。そこへ付け入ろうとする他勢力を、力を合わせて追い払うことで、スヴェンニーとブルゼイ族の確執を解消した。

 友好の証としてに硝石鉱床採掘利権を得た、というので間違いはありませんね。そしてそれが原因で商会とも決裂したことも。だからここにいるということも。

 ここからはあくまで推察ですが、共和国は商会を通じて北公に北公で使われる成分の火薬を売ろうとした。しかし、北公が巨大な硝石鉱床を見つけた為に商会は手を引いた、となるのでしょう。

 商会の何かと共和国製北公成分のガンパウダーの取引は共和国と商会が勝手に進めたものであり、北公にそれは正式には伝わっていない。伝わっていたとしても極めて限定的で不確定な形でしかなかった。

 共和国側で唯一ビラ・ホラが硝石鉱床であることを知っていたマゼルソン法律省長官が裏で手を引き生産に待ったをかけていた。

 故に無駄な商品生産は行われず、怒りは少なくとも北公へは向くことはない、と言ったところでしょう。繰り返しはこれで終わりにしましょう」


 もはや逃れられない。だが、ブルゼイ族王国建国というものはこのまま誤魔化せそうだ。


「商会と共和国についてはよくわかりませんが、運ぶものが硝石であることに間違いは無いです。

 ルカス大統領もビラ・ホラがどういう場所であるかご存じですね。カリスト元頭目の集めた北部文献で知っているから、先の黄金捜索には加わらなかったのですよね」


 硝石鉱床探索への不参加だった理由に対する俺からの試すような問いかけに、ルカスは一切答えず、頷きすらしなかった。

 あえて答えないという駆け引きや理解納得していないことからの無反応ではなく、当たり前のことに対して反応を見せないだけのようだ。

 やはりビラ・ホラが硝石鉱床だというのはかなり以前から知っていたのだろう。

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