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北の留鳥は信天翁と共に 第十四話

 ティルナは言い切った。だが、止まることはなくさらに質問をぶつけてきた。


「あなたたちがしていた黄金探しの、いえ、ビラ・ホラ探しの最中に、商会が共和国とある取引をしたことをご存じですね?」


 いったい何の話だ、それは。少なくとも俺は聞いていない。


 クライナ・シーニャトチカでは、参加者同士の話合いをする場合には第三者を立ち会わせることを条件に情報の共有を約束していた。

 俺がそこで共有することを決めたのは、あくまで“黄金捜索について”だけの情報だ。黄金捜索から外れている話である商会と共和国の取引にまで報告義務を持たせられない。

 だが、話合いがあったという最低限の報告はされるべきではないかとも思う。

 しかし、当該人物がレアとユリナだ。レアは人当たりが良いようで秘密主義なので積極的には言わないだろうし、ユリナに至っては「忘れてた、ゴメン」で流されそうだ。

 聞いていた第三者が自己判断で伝える必要がないと思ったのか、それとも意図的に伝えなかったか。

 もはや後の祭りではあるのだが。


「いや、知らない」


 ティルナがあら、意外と眉を上げた。どうやら知っていることを確かめるだけのつもりだったようだが、俺が首を縦に振らなかったことにより話が途切れた。そこへルカスが切り込んできた。


「先頃、私もマゼルソン長官とそのことについて話をしてな。

 ユリナ長官がクライナ・シーニャトチカに訪れた後くらいの時期に、軍部省が共和国統合先端科学局にあるものの成分分析依頼をしたそうだ。それもユリナ・ギンスブルグ長官名義でな。

 取扱注意で火気厳禁を言い渡されたそれは黒く光る粒だったそうだ。一見すると共和国の魔力雷管式銃の弾に使用されるガンパウダーのようだったが、なぜこの期に及んでガンパウダーの成分分析をするのか疑問に思ったそうだ。

 問いただすことも出来たかもしれないが、ユリナ長官は最初の一回だけ顔を出しその後は詳しく知らない代理人、軍部省の職員ではなくギンスブルグ家のメイドが毎回入れ替わりで進捗報告書を受け取りに来ていたので聞くことが出来なかったそうだ。

 分析の結果はガンパウダーであることは確かだったが、共和国で広く流通しているものとは違った」


 商会と共和国との取引についてとの繋がりが見えずに「つまり?」と聞き返した。


「その火薬は、誰かが余所で作ったもの、ということだ。そして、あくまで噂だが、北公は何やら新しい兵器を作ったそうだな。銃によく似たものだそうだ。なぁティルナ?」


 ティルナは深くゆっくりと頷いた。


「カミュを救出に向かった際に一緒に見ましたね、イズミさん? あそこは火薬の匂いが充満していましたね」


「そうだけど。北公? 商会と共和国の話じゃないんですか? 商会が売ったものをユリナが解析させたと言うことですか?」


 ルカスを首を左右に振り否定した。


「取引を知らないと言うことは、いつ行われたのか、それさえも知らないと言うことだな?」


 知るわけもない。困った顔でルカスを見てしまった。

 真っ直ぐに見つめられることにルカスまで困惑した顔になった。顎を引くとうむうむと喉を鳴らした。


「どうやら、しらを切っているわけではないようだな」

「イズミさんは本当に取引についてご存じないようですね。では、大統領、私の方から説明致しましょうか? 知っている前提で話を始めた私が悪いのですが、このままでは進まなくなってしまいます」


 ルカスは「いや、いい」と右手を挙げてティルナを静止した。

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