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失うことで得るもの 第二十一話

 教義(ドクトリーン)と銘打つだけあり、ただの独立宣言と民族承認だけではなく、北公の大前提についてのスピーチも併せて行われていた。


 キューディラジオ発信装置から伸びるコードを指に絡め、その先にあるヘッドホンを肩と首で挟んで、音量や音質を調整しながら聞いた宣言は、とても勢いのあるものだった。

 語気を強めたり弱めたりと抑揚を付け、理解させたい言葉を繰り返す様は、まさに「強い指導者」である。

 式典はなくスピーチだけだったとは言え、ユニオンの穏やかで、それでいて広がりと安寧を主張するような宣言とはまた違ったものだ。

 戦いの起きた世界ではこれほどまでに心強い声明はあっただろうか。


 しかし、自分のことが出てくると何ともこそばゆい。閣下を助けた青年とは俺のことだ。

 作成時にそれはいらないんじゃなのと進言し、切っても内容は支離滅裂にならないと言ったのだが、カルルさんが外すことはないと言い張ったのだ。だが、名前を伏せてくれることだけは何とか引き出せた。

 前日に、正確には当日の未明に行われた録音の際には聞いていたが、何度聞いても耳に当たるヘッドホンのイヤーカバーがくすぐったく感じる。


 以前のユニオンでの失敗の経験からまた不測の事態が発生するのではないかと恐れていたが、宣言は一時間ほどで無事に終わった。

 ほぼ即日決定即日実行で、情報が漏れていたとしても何か行動を起こす隙を与えなかったのだ。

 その後に各国の反応があることは予想されていたが、どのような情報伝達方式で伝えてくるかは不明だった。

 そこで、カルル閣下(さん付けからどうも慣れない)とムーバリとアニエス、セシリア。それから北公の一部上級幹部たちと共にノルデンヴィズの基地にある大きめの会議室に集まり待機していた。


 すると部屋に集まるや否や、不意に俺のキューディラが鳴ったのだ。

 それはヤシマからであり、タイミングはぴったりだったが早過ぎるので別件かと思ったが、これから宣言についての反応書簡を届けたいという申し出だった。


 まず先陣を切って反応を示したのはユニオンだったのだ。


 反応はとても素早かった。宣言が放送開始されてから一時間後、つまり午後一時頃という、ほぼ放送が終わると同時にカルル閣下への反応を見せたのだ。


 すぐさま了承したが、国防上の観点から人一人分ほどのポータルを開き書簡のみの手渡しとなった。ヤシマは書簡を渡すとポータルを閉じ、そそくさとユニオンに帰ってしまった。


“此度の独立は讃頌に値する。第二スヴェリア公民連邦国の新たなる門出をカルデロン・デ・コメルティオは祝福する。 カルデロン・デ・コメルティオ代表 ティルナ・カルデロン、友国学術連合評議会対外理事 ハンナマリ・ギゼルブレヒト”


 ティルナ・カルデロン会長および友学連代表の連名で書かれていた。ルカスはカルル同様、黄金探しがどういう物であるか全て把握していた。

 ルカス大統領ではなく、カルデロン名義で行われたことや、妙に早いレスポンスにもどこか策略の色がちらつく。

 ブルゼイ族については明言されていなかった。レスポンスの早さを重視して書き損じたのか、それとも何か思うところがあるのか、気になるところだった。

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