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白く遠い故郷への旅路 第三十九話

「立ちはだかったのはいいんですが、どうしますか?」


 車から下を見下ろすと、地面は軍服の男たちに囲まれてしまい、黒々とした無秩序に動く絨毯のようになっていた。

 だが、エルメンガルトの召雷のおかげで距離を取り警戒している様子を見せている。

 その殺気立つ人集りの先、破砕機の手前でシバサキはセシリアを抱えてこちらを見て笑っている。


「そいつらは鶻鸇騎士団(ヴァンダーフェルケ・オーデン)っていってなァ! 僕が連盟政府全土から選んだ精鋭部隊なんだぞ! お前らなんか簡単にぶっ飛ばしちゃうぞ! だから諦めろ!」


「何か言ってるが、どうするつもりだい、洟垂れ? 雷はまだ撃てるが、正確に撃てるのは私を中心に五十ヤードだな」


「俺たちがするのはセシリアを取り返すだけだ。まずはこのナントカ騎士団を全部片付ける。

 アニエス、君が氷で壁を作ってくれ。そして、エルメンガルト先生はそこからひたすら召雷攻撃。

 俺は真っ直ぐシバサキに向かう。死にはしないけど殴れば失神するのは分かってるんだ。顎とか鳩尾とか、急所狙って失神させて取り返す!

 アニエスは壁の維持とエルメンガルト先生を近接攻撃から守ってくれ!

 高速移動は禁止だ! 移動魔法もシバサキが何をするか分からないからそっちも!」


 そう言うと三人同時に頷いた。

 エルメンガルトが落雷で車の周囲の男たちを弾き飛ばし、出来たスペースにアニエスが幅二メートルはありそうな分厚く、極地で周囲が低温にもかかわらず冷気を放つほど冷たい氷の壁を、倒れた装甲車を中心に半径十メートルほどを囲うように築き上げ始めた。


 エルメンガルトは杖を振り上げて氷壁の中にさらに石の塊を混ぜ込み始めた。

「雷だよ。空に近づけばもっといい! 赤いの、私をなるだけ高いところに上げておくれ!」と言うと、アニエスは頷き装甲車の下に氷を作り上げて高さを上げた。


 男たちは登ろうとしたが、アニエスは下の部分の表面の温度をあえて上げることで滑りやすくしていた。

 滑るなら足場を作ろうと自らの杖をピッケルのように氷壁に刺したが、内側は超低温で杖が貼り付き今度はそれが抜けなくなっている。

 他が突き刺した杖を踏み台にして上ろうとすれば、足元の杖を落としていった。

 登ることが不可能だと分かるや、要塞のようになった氷壁を壊そうと目がくらむほどの強力な炎熱系の魔法をぶつけ始めた。

 しかし、アニエスの氷の壁はびくともせず、崩れてもすぐに再生しより強固になっていく。


 要塞はやがて塔になり、その頂上に立ち準備が整ったエルメンガルトは「さぁ行きな!」と両手を天に向けた。

 再び杖を天に掲げ始めると、それに呼応するように空は暗雲を渦巻き始め、先ほどとは比較にならないほどの幾筋の稲妻を湛え始めた。

 それはまるで生きているようにエルメンガルトの指示を今か今か、早く落とせと待っているようにうねっている。


 俺は杖を手の中で回し、強く握り直した。そして、杖を上に向け魔法を撃ち込んできている黒山の人集りめがけて、頂上から飛び降りたのだ。

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