背中合わせの邂逅 第二十五話
同時に天井の丸蓋が再び開くと先ほどの砲手の女性が顔を出し、「(バリア張ってるヤツが消し飛んだみたいだ! 機関銃に切り替える!)」と口角を上げていた。
フラメッシュ大尉は顔を上げてその女性を見ると「(よくやった! 私たちも攻撃する! そのまま続けてぶっ放せ!)」と親指を立てた。
女性が「(アイマム!)」と言うと再び蓋を閉めた。しばらくすると機関銃を放つ音が絶え間なく聞こえ始めた。
鉄の屋根を打つ雨音のような機関銃の発砲音を受けながらフラメッシュ大尉は再び壁へ歩みだし、壁にかけられていた銃を取り上げた。
そして、
「ならば乗客たち、乗ってるだけなら燃料の無駄で邪魔だ。ただの客になりたくないなら、銃を持って後ろのメイジどもを撃ち殺せ。北公、お前らは銃を使ったことはあるから後回しだ」
と銃を押しつけるようにベルカとストレルカに投げ渡した。
「ブルゼイども、撃ち方は分かるか?」
突然銃を渡された二人は驚いたように首を下げ、フラメッシュ大尉と腕の中の銃を交互に見つめた。
そして、あぁーと声を出しながら銃口を誰もいない方向に向けながら撫でるように見た後、「この、これ、引き金だったか? これを引きゃ良いのか?」と顔を上げて少し混乱した様子でそう言った。
「そうだ。もう分かっただろうが、これは共和国の魔法射出式銃だ。
そして、ありがたいことに共和国の兵器は万能だ。お前らのようなボンクラにも簡単に扱える。
撃ち方を知ってるなら戦え! 上の出っ張りを引け、それがセイフティだ!」
言われるがままにベルカとストレルカが同時に突起を引くと、セイフティが解除されるピィーンと張り詰める小さな高音が銃から響いた。それを見たフラメッシュ大尉は大きく頷くと後方の窓を開け放した。
「排莢もクールタイムもほぼ無いに等しいが、単発で飛んでいく!」
大きく開けられると同時に風が吹き込み、木々や大地が焦げるような匂いと火薬の匂い、それから魔法を使うとき独特の金属を噛みしめたようなニンニクの匂いが車内に充満した。
「撃て! 撃て!」
フラメッシュ大尉が両手を扇ぎ、ベルカとストレルカを煽って窓辺に追いやり発砲を促した。
ルフィアニア語は理解出来なくとも、荒げた言葉の意味が撃ての号令だというのが分からないわけもない。それはベルカとストレルカも同じようだ。
二人はマホウシャシュツシキ銃をそれらしく構えた。
これまで銃すら触ったことが無いはずにもかかわらず、まるで使い慣れているかのように脇を締め、肘を身体に押さえ付けて銃を固定して射撃を始めた。
反動に身体を押し戻されることもなく、人を撃つことへの躊躇いの無い黄色い閃光をいくつも後方に流し始めた。




