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背中合わせの邂逅 第二十二話

 そう言うとフラメッシュ大尉は天井の丸い蓋を閉め、身体についた埃を軽く払う仕草をして「さて、話の続きと行こうか」と言うとイルマの方を見た。


「なんだったか。私たちは連盟政府だがそうではない、ということだ」


「そう、そうなんですか? でも、連盟政府に属しているというのに、こんなの」と車の中を見回した。

 土や油が付着している縞鋼板の床の上にはまだ仄かに温かい先ほどの機関銃が、リベットがなく隙間無く溶接された鋼鉄の壁には銃の形はしているが見たことも無いものが所狭しと掛けられている。


「北公みたいな、いえ、北公よりもすごい武器が何であるんですか?」


 イルマが再び尋ねると、フラメッシュ大尉の反応を待たずにベルカが「ちょっといいか、ベスノーシュカ」と遮るように前に出た。

 そして、フラメッシュ大尉の前に立ちはだかると、装甲車の壁を舐めるように見つめながら右手の平で優しく撫でた。


「こりゃ、よく知ってるぜ? 装甲車ってんだろ? 頑丈で自走するんだ。乗ったぜ、イズミとな。あいつが最初乗ってきたときは鋼鉄か岩石の魔物でも連れてきたのかと思ったぜ」


「そうだな。私たちがイズミに貸し出したものと同じ型だ」


 天井から再びあのライフルを撃つ音が響き渡ると、全員が一斉に顔を上に向けた。

 だが、誰もが驚きはしても大きな反応を見せることはなく、すぐにベルカとフラメッシュ大尉のやりとりを固唾をのんで見守り始めた。


「何度見てもすげぇ技術だぜ」


「褒めて貰えて光栄だ。魔術至上主義で前時代的魔術利用から脱出できず時代遅れでどん詰まりな進歩が見られない連盟政府からは独立しているからな」


 フラメッシュ大尉がそう言うと、ストレルカはベルカの後ろの方で「言い過ぎだろ」とへっへと笑った。しかし、ベルカは眉を寄せて首をかしげた。


「何が『連盟政府からは独立しています』だよ。白々しいぜ。お前ら、連盟政府のモンじゃねぇだろ。それどころか」


 間を開けて鼻から息を吸い込むと「お前ら、人間ですらねえだろ?」と言ったのである。

 それには驚いてしまい、思わずベルカを見つめて硬直してしまった。驚いているのはイルマも同様のようだ。

 人間ではないと言えば、自ずとそれは――。


「ほう、なぜそう思った?」


 ストレルカが笑うのを止めると、装甲車の中にある、確かに連盟政府にはない金属の仕組みや見たこともない多弾砲を舐めるように見回し、


「アンタさんが言った通りの魔法べったりの魔法使いどもが、これだけ魔法を介さないモノを作れるたぁ誰も思わねぇさ。

 黄金探しの過程でブルゼイ族が発展していたのはそれなりに知ってたが、どれも魔法が結びついていた。

 魔法を自ら潰したブルゼイ族ですらそうなんだ。魔法を使わないでモノを発展させるなんてなァ、オイ。

 イズミとよろしくやってたあたり、あいつも知ってたんだろ?

 それにアタシらがお前らの基地にかち込んだとき、人間じゃねェ部下も一人いたのを覚えてるぜ? あの筋肉ダルマ、ウィンストンとか言うのもドヴェルグとか自称してたな。

 あいつだけじなくて、あの場にいたのはみんな、人間じゃなかったってェワケか。

 つか、ここまでどうやって付いてきた? お姫様がいねェとトンボは乗せちゃくれねェハズだ。

 アタシらはキチンとした客で乗ってきたが、こいつら北公のヤツらはイズミの車に捕まって付いてきた。だが、このでっかいのが捕まるのは無理があるだろ。

 古代ブルゼイ族よろしくお空でも飛んだか?」


 とフラメッシュ大尉にきつめに試すように尋ねたのである。


 フラメッシュ大尉は険しい表情のままベルカとストレルカを交互に見て黙り込んだ後、

「連盟政府は広いぞ。いくつもの有象無象の土地持ちがよってたかって作った国家だからな。その中に人知れず技術の進んだ連中がいるかもしれないぞ?」

 と答えた。

 どうやってここまで付いてきたか、それだけではなく様々な疑問をあえて無視するようにすました顔でそう答えたのである。


 ベルカは下を向き目をつぶると、口角を上げた。膝をパンと叩くと「それあんだよ」と顔を上げた。


「そういう言い方をするところだ。その連盟政府をこき下ろすような言い草。

 だが、それならこのベスノーシュカとデカいのが知らねぇだけで、実は北公の連中かもしれねぇ。

 しかし、こいつらの上司のムーバリ上佐とやらぁ北公のお偉いさんの側近だ。その部下が知らねぇとなると北公ですらねぇ。西の果ての国はこの件に興味がねぇ」


 黙り込むと身体を少し前屈みにしてフラメッシュ大尉を覗き込むようになり、


「お前ら、エルフだろ」


 と尋ねた。


 私やイルマは思わず警戒してしまい、壁に後退ってしまった。

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