背中合わせの邂逅 第二十一話
「対魔ライフルだ。魔法射出式銃の開発初期の銃を魔力射出式に換装したものだ」
フラメッシュ大尉はそう言ったが、何を言っているのか分からなかった。銃であるのは間違いないがマホウシャシュツシキやマリョクシャシュツシキとは何なのだろうか。
混乱した表情の私たちを見て大尉は「分かるわけもないか」と満足そうに右の口角を上げ、さらに話を続けた。
「簡単に言えば、魔法によるバリアを物理的に突破するため実弾を撃つものだ。威力が強すぎてほとんど大砲だ。多少重いが装甲車に積んどいて正解だったようだな。
あれで地面ごと魔法使いどもを吹き飛ばす。しばらくは追っては来られないだろう。衝撃と爆音に備えろ! これから撃つぞ!」
「(大尉! 指示を!)」
「(左後方、一列に並んでいる魔法使い進行方向。行く手を塞げ。三発!)」
指示を受けた銃座の砲手は重たい砲身を腕に筋を浮かべて動かした。狙いが定まったのか、低く重い金属音を上げて砲身の動きが止まった。
それと同時にフラメッシュ大尉が「(撃ちー方ァ、始め!)」と声を上げた。
砲手は「(大尉殿はいつまで海の上の兵士つもりなんですか、ね!)」と何かを言いながら引き金を握ると、強烈な炸裂音が耳を引き裂いて音を奪った。
発射音で遠のきまるで木くずでも詰められているような耳の中に、すぐさま金属の塊が屋根の上に落ちて転がるような重たい音がくぐもって聞こえた。
後方の窓から赤い強烈な光が差し込み、車内の壁に人の影を伸ばしていった。
赤く眩しい何かの物体が後ろへと飛んでいくようで、隣にいたイルマの顔を上から下へと赤く照らした。
目がくらみそうだがそちらを見ると、追いかけてきている魔法使いたちの集団に向かって赤く強烈に発光する弾が飛んでいくのが見えた。
放たれたときの音は大きく、薬莢を捨てる音以外は聞こえず、まるで無音の中をその赤い弾が飛んでいくように感じた。
しかし、それでも赤い弾はおぞましく空気を振動させているのか、耳では聞き取れないほどの振動を肌に刺すようにビリビリと伝えてきた。
素早い発光体だったが奪われた視線をそれから外すことが出来ず、魔法使いたちの手前に着弾するまで見届けてしまった。
それは地面に当たると同時に炸裂し、世界が暗転するほどにまぶしく輝いた。
さらに強まった光に遅れて、聞こえづらくなっていた耳をさらに突き破るような音が頭の奥にまで響き、衝撃波で車が揺れた。
光にくらんでいた目が慣れたので煙が晴れた着弾地点を見ると、地面には抉るようなクレーターが出来ていたのだ。
そこは熱で溶けた石や土がドロドロと抉れた地面の内側へと流れ、さらにどれほど高温なのか想像も付かないほど熱いようで空気が揺らめいてすらいた。
あれに魔法使いたちは巻き込まれたのか。吹き飛ばすと言うより、消し飛ばすだ。
直撃は免れたとしても、熱に揺らめいて陽炎を作るクレーターの近くにいるだけで蒸発してしまうだろう。離れていたとしても、熱風に身体が切り裂かれてしまう。
撃ち込まれたらと思うと、ぞっとする。
「(砲身冷却次第、次弾込めろ! 込めたら指示を待たず自己判断で撃て! バリア張ってるヤツがいなくなったらもう一度魔法機関銃で薙ぎ払え!)」
「(アイマム!)」




