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背中合わせの邂逅 第十八話

「イルマ! 大丈夫か!?」


 イルマの肩を叩き身体を揺すると、彼女はゆっくりと目を開けた。それから瞬きを数回繰り返して身体を起こすと「どうなったんですか?」と鼻と口から出た血を拭った。


「とりあえず、もう大丈夫だ。君は休んでいろ」


 イルマを再び壁により掛からせた後、ガタガタと揺れる車内を移動しイルマを運んでいた女性に近づいた。


「ユカライネン下尉を運んでくれてありがとう。ところで済まないが、この車は何処へと向かっているのだ?」


 行き先を尋ねたが、その女性は口を開けて私の目をぼんやりと見るだけだった。

 しばらく黙っていると気まずくなったのか、視線を泳がせた後に


「奥方、『勝つ、つく、いい。わからない。なら、つく。勝たせろ』、指示が出ておった。だから、ゴフの鳥、姿、見えない。上から見張ってた」


 と片言でやや大げさなボディランゲージを交えてそう言った。


 どうやら言葉が通じていないようだ。連盟政府の識字率は上がっていたが、この女性は哀れにも言葉を理解出来ないのだろうか。

 しかし、人のいるところで暮らしていれば、文章は書けなくとも意思疎通が可能な程度に自然と会話が出来るようにはなるはずだ。

 それに先ほど、流暢なエノクミア語を話せる指揮を執っている女性と会話をしているのは見えた。

 尋ねたこととは違った回答と片言であることを不思議に思い、私まで彼女を口を開けたまま見つめ返してしまった。そこへ先ほどから指揮を執っている女性がやってきた。


「失礼。その子はまだ新入りだ。エノクミア語習得中で片言になってしまっている。私が代わりに挨拶しよう。

 初めまして。私はゲンズブール先史遺構調査財団の私兵団、フラメッシュ大尉だ。見れば分かると思うが現場の指揮を執っている」


「これはご丁寧に。自分は第二スヴェリア公民連邦国、第十四魔術擲弾部隊所属、オスカリ・ウトリオ上尉である。大尉とは上尉と同じ地位だと受け取らせていただく。

 こちらはイルマ・ユカライネン下尉だ。彼女はこれまでの戦いで魔力を消費しきっている。彼女に代わって私が礼を言おう。事情は分からないがとにかく助かった」


 お互いに自己紹介すると今度はベルカとストレルカの方を見た。すると、二人は肩を上げて驚いたように見つめ返してきた。


「……アタシらもかい? アタシらは籍無し国無し名前無し、さすらいのツィゴイナーだよ」


 ストレルカは「呼びたきゃ、アタシはストレルカ」と自分の胸の辺りに親指を突き立てた。そして、「こいつはベルカ」と親指をベルカの方へ向けた。ベルカはそれに右手を挙げて答えた。


「オレらもとにかく助かったぜ。だが、色々聞きたいことがありすぎるんだが」


 そう言うと車の中をなめ回すように見回した。

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