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背中合わせの邂逅 第十七話

「うおおおああああ!? なんじゃこりぁ!」


 強くつぶった目の奥深く、ベルカの落ち着きの無い声が耳をつんざき頭の中に響いた。私たちはまだ死んではいないようだ。


 そっと目を開けると、ベルカとストレルカを囲み、さらに私たちへと向かって来ていた敵たちが煙を上げて、ある者はうつ伏せにある者は仰向けになり幾重にも折り重なって倒れていたのだ。

 顔の見えている者は白目を剥き、口を開けてよだれを垂らして痺れているかのように痙攣していた。


 ベルカとストレルカが人の山を落ち着くなく見回した後、顔を上げて私たちの後ろ睨め付けた。しかし、その目に写ったものが予想だにしていなかったのか、引きつるように目を見開いていった。

 私も後方から光が差していることに気がつき振り返ると、大きな四角い影の上に数人の女性の影が見えた。

 手を顔の前に出し光を遮ると次第に目が慣れ、何がそこにいるのかはっきりとしはじめた。


 外からの光を遮り、私たちを影の中に落としている物体は大きく、光を返さないように黒く乾き、その足下にはが四つの車輪とそれを覆うような覆帯が付いていた。

 それはどう見ても先ほどイズミたちが乗っていた装甲車だったのである。しかし、姿形は似てはいるものの、どこか形が違っていた。


 影の中にいた女性は茶髪の長髪で、左右に分けられた前髪の合間に見える細い眉と眉の間に皺を寄せてこちらを見下ろしていた。

 よく見ればその手には銃、それもアスプルンド零年式二十二口径ではない見覚えのない銃を携えていた。


 その女性は飛び降りると真っ直ぐこちらに向かってきて、腕の中のイルマを取り上げようとした。

 何も分からず抵抗してしまうと、「生かしたい、生きたいんなら乗れ!」と強引に奪われてしまった。


 そのとき、女性の肩に付いているワッペンのロゴが目に入った。それはなんと例の民間の先史遺構調査財団と名乗っていたゲンズブール財団のロゴだったのである!


 様々なことに混乱し戸惑っているとその女性は「そこのブルゼイ族の二人は味方か?」と尋ねてきた。

 複雑な事情だが、一時的にでも共闘したので余計なことは言わずに「そうだ」と短く答えた。

 すると、女性はイルマを別の女性に渡すと立ち上がり、「おい、チンピラブルゼイ族二人! 装甲車に乗れ!」と呼びかけた。

 呼びかけられたブルゼイ族は私とイルマ、それからイルマを運び込んでいる女性を見ると装甲車に向かって走り出した。


「あの怪しい先史遺構調査財団か!? 帰ったのんじゃねェのか!?」


「とにかく、乗れ! 置いてくぞ!」


 疑問が山のように、次から次に生まれてくるが、まずはここで車に乗ればヴァンダーフェルケたちの執拗な攻撃から逃れられる。

 安直に信用して車という閉鎖空間に自ら飛び込むのは危険なことだが、彼女たちからはイルマを助けようという意思も感じられる。

 私は急かされるよりも早くイルマの杖を拾い装甲車に乗り込んだ。それに続いてベルカとストレルカも乗り込んできた。


 二人が乗り込むと同時にドアが閉められたが、閉まりきるよりも早く装甲車は嘶き、力強く走り出した。

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