背中合わせの邂逅 第十四話
「たかだか私たち四人にこの大人数! 跡形も残さないつもり!?」
「勝利することだけ考えろ! 自分たちが認められてるってことだ! 戦える自分を誇れ!」
しかし、実際のところ状況はあまり芳しくない。
先ほどの稲妻で数は多く減らすことが出来たが、どこから湧いてくるのかすぐに数は戻り、さらに増え始めたのだ。
想定以上に我々が抵抗したため更なる数を投入して押し切ろうとしているのか、我々を円形に囲い込み先ほどのような大規模攻撃ができるほどの隙や突破口を作るきっかけを次々と奪っていった。
次第にその円も狭められて追い詰められ始めた。そのとき、背中に何かが当たったのだ。
敵かと思いそちらへハルバードを向け背中の男の喉に突きつけたが、それはベルカだった。ベルカも私の喉に剣を突き立てていた。
こいつらにも攻撃はしなければいけないし、されるかもしれない。しかし、ベルカは何もせず、私もそれどころではなくなっていた。
お互いに何もせず背中を回り込むように離れるとヴァンダーフェルケへの攻撃を始めたが、すぐに再び背中合わせになった。
「はっはぁ、調子はどうだ、スヴェンニーの兄ちゃん!? お前の女は雷さまか!? なかなかやるようだが、息が上がってるぜ?」
「誰かにみぞおちを蹴られなければな! だが、お前も押されているではないか! 余裕で我々を吹き飛ばすんじゃなかったのか!?」
「御生憎サマ、今ぁ余裕がねぇ。雑魚は雑魚でも、数が多すぎる!」
「全くだ。連盟政府はこの連中を我が南進軍に当てるべきだったな! ろくな采配も出来ないとは、北公は分離独立して正解だったようだ! 我々の優秀な兵を腐らせずに済んだ!」
「ベルカァ、何人かそっちいったぞ!」「オスカリ、危ない!」
顔を上げるとヴァンダーフェルケの黒い軍服が上から二つ迫ってきた。
背中を合わせていたベルカが「ッオラァ!」と叫ぶと同時に交差するように場所を入れ替わり、私も杖の氷を大剣に変えて薙ぎ飛ばした。
「あっちも背中合わせみたいだぜ?」
「クソが! 黙って戦え、終わったらお前たちの番だ!」
「おい、スヴェンニーども。提案がある!」
「なんだ! 言ってみせろ! 聞くだけ聞いてやろう! 下品な奴め!」
「この状況で余裕だな! こいつらハヤブサさんたちゃオレたち両方消す気だ! ここは一旦背中を預け合わせようぜ? アンタらの上官も言ってただろ!?」
「敵の敵は味方、ではありません! 私たちは敵同士です!」
「おい、そばかす女! その話はこの肉付きの良いハヤブサのお坊ちゃんたち蹴散らしてから決めようじャないか!」
いつの間にか近くに来ていたイルマとストレルカが武器を振り回しながら怒鳴って答えてきた。
この状況はまずい。ベルカとストレルカを含めた私たち四人がいる円はじっくりと小さくされ始めていて、先ほどから追い詰められているのは明らかだ。
ついには本来戦うべき相手であるベルカと背中合わせにまでなってしまったほどである。
多数が相手では、我々が強く相手が弱くとも数で押されてしまう。数に対抗するには数しかない。
 




