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背中合わせの邂逅 第三話

「そうなると、戦闘は避けられませんよ?」


「ユカライネン下尉もヒートアップしています。この様子では相手も話を聞くことはないでしょう。一度戦って下し、話を聞かせる必要があります」


 もちろん真の目的までは教えない。それを分かっているのかとムーバリ上佐はちらりと視線だけを寄越した。分かっているように頷き返すと、上佐には伝わったようだ。

 上佐はブルゼイ・ストリカザの位置を確かめるように視線だけをそちらに送った後、上の方を顎で指し指示を出してきた。

 冷静になれと止められるかもしれないと思ったが上佐は意外にも否定しなかった。

 それ以外に選択肢は無いのだろう。だが、我々も相手同様、信頼関係は構築できているはずだ。


「この二人は強敵ですよ? 防衛対象が居たとはいえ、私もだいぶ追い詰められました。すでに銃に対してさえも戦い方を心得ています」


「構いません。行ってください。この人たちは、我々若い世代のスヴェンニーが相手になるべきなのです! それに、銃が主力の国の魔法使いである自分とイルマが、魔法でどのように戦うかは知らないはずです」


 自分だけは冷静だと思っていたが、そうではないようだ。杖を握る手に力がこもり、杖の魔力は強くなったのか持つのも痛くなるほどに冷たくなり冷気を上げている。


「なるほど、そうでしょうね。不利ではないでしょう。

 ですが、相手は殺すつもりで来ています。イズミさんの不殺の理念が二人にまで及んでいると甘い考えはしないでください。

 一方のあなた方に殺す意思はないようですね。厳しい戦いになりますよ?」


「殺す殺さないではないです。我々が勝てばいいんです。勝たなければいけないです」


 上佐はその言葉に驚いたように目を開き、少しばかり口角を上げた。


「感心しました。私も若手のつもりではありますけどね。では、お任せします」


 そう言うとすぐさま走り出そうと構えたので、杖を振り作り上げた氷壁の一部を切り崩した。


「おっとそうはいかせねぇ!」とすかさずベルカが反応しそちらへ向かった。

 それと同時に、反対方向の壁を崩した。そして、「上佐ァ! 行ってください!」と声を張り上げると、今度はその声に反応しストレルカが反対方向を塞ごうとそちらへ向かった。

 しかし、ムーバリ上佐はどちらにも行かずに大きく地面を蹴り、どちらの崩れた壁からも離れた位置にあったブルゼイ・ストリカザへと大股で近づいて行った。

 勢いを付けて槍を引き抜くと、氷の壁に突き刺しさらに壁を蹴り上げて登り越えていくと、あっという間に見えなくなった。


「こそこそ話してやがると思ったら」

「上佐殿がいなくなるのはキツいんじゃねェのか? ナメてんのか?」


 最初に壊された壁の亀裂に二人は戻らず、新しく作った亀裂の前で再び二人は腰を落として構えた。

 上佐がイズミたちの後を追うことで、残された我々が戦うつもりであることを理解したのようだ。私は氷の壁を全て解除した。戦う為にはもはや必要が無い。


「いえ、ナメてなどいません! どれだけ私たちとの実力差があったとしても、それを乗り越えてあなたたちに挑み、そして、勝たなければいけないのです!」


 氷壁が冷気と砂煙を上げながらガラガラと崩れて行く音に負けない声でイルマが意を決したようにそう言うと、ベルカとストレルカは歯をむき出しにして強烈に笑い出した。

 そして、笑い声と共にそれよりも大きな殺気が波のように覆い被さったのである。


「イイネェ! 気に入ったぜ、二人組(ポパーラノ)! お前らを全力で潰して、上佐の可愛いケツ追っかけるぜェ! はっははははは!」


 ベルカは滑らかに手首を返し剣を曲芸のように振り回すと、再び手の中に収めて笑うのを止めた。

 二人の足首が力に膨らみ、革でできた靴がはち切れそうになると同時に二人はこちらへ向かって走り始めた。

 どれほどの力を込めて踏み出したのか、目で追う姿も滲んで見えるような素早さである。

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