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白く遠い故郷への旅路 第三十四話

 シバサキはこちらをしきりに指さして何かを喚いていたが、何も聞こえなかった。

 ポータルを混線させてしまえばこちらのものだ。今後を左右するような何か大事なことなど、彼の口から出ることなどあるわけがない。

 どうせ不愉快この上ない暴言しか吐いていないのだ。聞いていて苛立つだけなら完全に無視していい。


 地団駄を踏むようなりながらひとしきり喚いた後に再びポータルに入っていった。

 しかし、すぐに真後ろの混線したポータルから出てくると、あれ、と間の抜けた顔で左右を見回した。

 天を見上げて何かに訴えかけるように拳を振り上げながらぶつぶつ言った後、舌打ちをして走り出したのだ。


 とにかく移動魔法は封じることができた。足での移動ならなんとか追いつけるはずだ。

 しかし、追いかけようとしたそのときだ。今度は突風が吹き荒れたのだ。シバサキの走って行った方角から強烈な砂煙が舞い上がり、こちらへ向かってきたのだ。


 砂埃は壁のように迫ってきた。濃く茶色く影を落とし、目の前まで来ると視界を完全に塞いでしまった。


 砂埃は通り抜けるようなものですぐ収まったが、砂埃に飲まれている間にシバサキはだいぶ先へと進んでしまったようだ。既に小さくなってしまっている。人間の足にしては速過ぎるのは、おそらく移動魔法以外の能力を使っているのだろう。


 北公の三人組を牽制していたベルカが「おい、後は北に向かうだけでここはもうほとんど終着点のはずだろう!? なのに、なんであの不死身の中年はプリャマーフカを攫ったんだ?」と近づいてきた。


 俺は遠ざかっていくシバサキを見失わないように目を離さないようにしながら、北公の三人組の方へと再び杖を向けた。


「知るかよ! とにかくシバサキを追いかけるぞ!」


「北公どもはどうする!?」


「そっちも知らねぇよ。放っとこう! セシリアがいなければ元も子もない!」


 ストレルカが、あいよ、と足を上げて身体を捻ると砂を巻き上げた。先ほどシバサキにやられたように風を起こし彼女の蹴り上げた砂を三人組の方へと流した。


「待て! 話を聞け!」


 しかし、走り出そうとすると今度は目の前に氷の壁が出現した。ウトリオが氷の壁を作り上げたのだ。シバサキ以外は全員氷壁の内側に取り残されてしまった。


「邪魔すんなァ! 話してる暇なんざ、今ァねェんだ!」


 ベルカとストレルカが怒鳴りながら飛び上がった。そして、氷の壁の一部を粉々に蹴り砕くと、「装甲車ぁまだ走るんだろう!? 先に行け!」「早いとこ姫さまのとこへいきなァ!」と道を開けてくれた。


 アニエスを連れて装甲車に乗り、エンジンをかけてシバサキの逃げた方向へと走り出した。

 割れた破片が残ったままの窓から二人を横目で見ながら「二人とも、後から来いよ!」と叫ぶと、二人は親指を立てて笑った。

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