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PSB-円卓学園-(第二版  作者: 335
15/15

《後日談》

 学年末試験を終え、いよいよ春休みに突入。

 妖子の提案の元、俺たちはセントラルはサブカルチャーの聖地『アキバ』へ、小旅行をしに行くことになった。

 妖子は電気街でP・Sのパーツやパソコン周辺機器。

 槍剣さんは『演技力を磨くんヤー』とかでコスプレ衣装と『メイド喫茶』という物を見て見たいらしい。

 俺は探索部の活動に必要な道具や最新ゲームを見る予定。

 今日はその日程調整のために、諸星の実家『ガウェイン亭』に来ていた。


「はいよ、ウチの人気メニュー『黄金のとんかつ定食』三人前。キャベツましましで」

 諸星は俺たちの目の前に()()()()()()()()()が乗った皿を三人分並べる。


「多いわ⁉」

 まるで槍剣さんのような口調で思わずツッコム。


「いやいや、ウチのキャベツ絶品だって。最近主流の水耕栽培品じゃなくて、ちゃんと地面で育ったオーガニック野菜だから評判なんだぜ?」

「限度があるだろ…」

「でも諸星君? オーガニックって高いんじゃないの?」

「契約農家さんが『生産調整で潰すくらいなら』って安く売ってくれんですよ」

「このご時勢、何処も世知辛いモンやナァ。‥ん、アーサー? キャベツ食べへんのやったら貰うデ?」

「も、もう食ったんスか…」

 槍剣さんのテーブルでは、既にキャベツ皿が空になっていた


「それで、今日はどうしたんだよ? 美女を二人も侍らせて」

「語弊のある言い方すんじゃねぇよ…。春休み、みんなで泊り掛けでセントラル行くから日程調整」

「あ、マジで? 俺も一枚かんで良い?」

「え? 構わんけど、良いのかよ家の仕事は?」

「これから交渉する。そっちに合わせるから連絡してく…、あ! りゃしゃっせー、ようこそガウェイン亭へー!」

 諸星はあらたに来店した客の対応に小走りで向かう。

 一緒に行ければ楽しいだろうが、本当に休みが取れるんだろうか…。


「…ンッ?」

 不意にテーブルの上に置かれていた槍剣さんの端末が震え、槍剣さんは『スマン、電話ヤ』と言って店の外に出た。


「何事だ?」

「何か、バイト始めるっていっていたよ?『衣装を買うにしても、先立つ物が入る』って」

「その内、夏と冬の一大同人イベントに出たりして…」

「あー、ボクもバイト始めようかなぁ。欲しい物も食べたい物も沢山あるし」

「部活に影響が出ない程度で頼むぞ。折角あんなデカい発見して、報告書出せずに廃部とか目も当てられん」

「大丈夫。ちゃんと調整付けるか。……ところでさぁ」

 妖子が椅子に座り直し、改まった様子で俺を見る。


「この前の話、考えてくれた?」

「『この前?』 なんか聞いてたっけか?」

 俺はさも『何の事やら』という態度でキャベツを頬張る。

 正直、何の話かは察しがついていた。


「P・S部への入部! 折角あんな凄いP・Sを見つけたんだし、またやろうよ? 兼部でいいから!」

 国から派遣された『戦争遺物調査団』と学園が協議した結果、エクス・カリバーは現在妖子たちP・S部が管理している。

 それと言うのも、機体を最初に動かした俺の情報が登録されてしまったのか、エクス・カリバーは俺以外の操縦を一切受け付けなくなっていた。

 その為、国が回収することは勿論、妖子たちP・S部で活用することも出来ず、今も学園の地下駐車場の隅っこで体育座りをしている。

 お陰であの日以来、妖子は「これはもう『運命』だよ!」と、事あるごとに俺を勧誘するようになっていた。

 確かに、あれ程のP・Sを動かせないまま埃に埋もれさせるのは『宝の持ち腐れ』もいい所だろう。

 しかし俺は…。


「この前警備型と戦ってた時、アルト凄く楽しそうだったじゃん!」

「はぁー…。‥あのなぁ妖子…。お前も槍剣さんも俺を買い被り過ぎなんだよ…。お前が思ってるほど、俺は強くも何ともない。試合に勝てない日々に勝手に焦って、自暴自棄になって…、オマケに向き合うことすら出来なくなった臆病者だ」

 定食メニューに付いて来た熱めのお茶を一気に飲み干し、エクス・カリバーでの戦いを思い出す。

 あぁそうとも。

 エクス・カリバーに乗っていた時は、本当に楽しくて仕方が無かった。

 口では何だかんだ言ったって、俺はやっぱりP・S・Bが好きなんだと改めて実感もした。

 でも一度逃げ出した俺が、今更どの面下げてP・S・Bの世界に戻ればいい?


「‥ねぇアルト? ボクがP・S・Bで()()()()()()()()って、誰だか知ってる?」

 再び箸をキャベツの山に突っ込もうとした所で、妖子がぽそり訊ねてきた。


「勝ちたい相手?」

 妖子程の強さを持つ奴が勝ちたい相手。

 そんじょそこらのアマチュア選手とは思えないし、ココはプロ選手か?


「‥デグおじさん?」

 真っ先に思い浮かぶのは、妖子の父親であり、俺たちにP・S・Bを最初に仕込んでくれたデグおじさんだ。

 しかし妖子は「ブー」と口でハズレを効果音を発し、持っていた箸でバツ印を作る。

 俺は「行儀が悪いから箸は止めろ」と妖子を嗜めた。


「父さんはぁ…、ちょっと別次元」

「……解らなくはない。じゃあ、デグおじさんを倒したペンドラゴン選手」

「またハズレ。そんなレジェンド世代の選手じゃないよ」

 ちなみにペンドラゴン選手の世界ランキングは一位。

 連勝記録も、現在世界記録になっていて未だに破られていない。

 それは兎も角、候補者が居なくなって来たぞ?


「…槍剣さん?」

「アルト、からかってる?」

「スマン、ホントに解らん」

 妖子は口元のソースを拭いてコップの水を飲み干すと「…アルトだよ」と少し恥ずかしそうに答えた。


「お、俺ぇ?」

 思わず箸で自分を指差す。

 今度は妖子から「アルト、行儀が悪い」と言われてしまった。


「何言ってんだお前…。今まで何度も勝ってだろ?」

「最近の『牙の折れた死に体のライオン』じゃなくて、自意識過剰で怖い物知らずで世間知らずだった頃の…、周りから『ウェポン・マイスター』って呼ばれてたアルトに勝ちたいんだよ」

「ひっでぇ言い草だな…」

「あの頃のアルトは、誰に負けても、どれだけ連敗しても、常に歯を食いしばって頑張ってた。確かにボクは勝負には勝ってたけど、気持ちでは何時も負けてたんだよ? だからボクは、気持ちでアルトにずっと勝ちたかった」

「いやいやいやいや…。俺の心、しっかりと、バッキバキに折られてるから。お前に惨敗した時の事なんか、未だにトラウマもんだぞ?」

「それは違うね。アルトの心を折ったのは、()()()()()だよ。『白井 妖子には絶対勝てない、諦めろ』って弱い自分の心にね。でもエクス・カリバーで戦ってる時のアルトを見て、ボクは確信した! アルトの中の『ライオン』は、まだ生きてるって!」

 妖子は座席から立ち上がって俺の前に来ると、俺の胸に拳を強めに押し当てた。


「だからアルト、逃げないで。もう一度、ボクに嫉妬してよ。悔しい、妬ましいっていうボクに対するどす黒いまでの闘争心を思い出して? そして、それをボクにぶつけてよ。ボクはずっと、待ってるんだから」

「‥そう言えば聞きそびれてたけど、何時からだ?」

「高校卒業した頃から。因みに、槍剣さんも何となくだけど察してるからね? 何年幼馴染やってると思ってるの!」

 妖子は腰に手を打て、何時ものドヤ顔を浮かべる。

 やれやれ、全てお見通しだったって訳か?

 今日まで必死に隠していたつもりが、全部俺の独り相撲だったとは…。

 もはや、笑うしかないな。


「な、何? いきなり笑って…」

「いや…、お前がトンでもない『ドM』だっていう事が良く解ったよ」

「なッ! ちょっと、どうしてそうなるのさ! もぅ!」

 妖子は顔を赤くし、頬を膨らませて座席に戻ると、ややムキに成りながらキャベツの山をガツガツと食べていった。

 俺はばれない様に、思わず出ていた涙を拭った。


 ……なぁ、妖子。

 お前は何時もそうやって、俺に手を伸ばしてくれるな。

 でも、一度逃げた俺が、本当にその手を握っても良いのか?

 お前の隣を歩いて良いのか?

 それが許されるなら、俺は…。


「いえぇ~イ! バイトゲットだゼェ~!」

 俺たちのちょっとシリアスでセンチメンタルなやり取りなど露知らず。

 戻ってきた槍剣さんは超ご機嫌だった。


「あ、受かったんスね、バイト」

「先輩、何のバイト応募したんだい?」

「フッフッフッ…、ずばりヒーローショーの悪役ヤ! その名も『怪人★ダンボール仮面‼』」

「あぁ…」

「あぁ…」


 それから数日後。

 何処から情報を仕入れたのか、旅行当日には唐久多も合流。

 五人でアキバを含めたセントラル観光にいく事になったのだった。


 余談だが、学年末は赤点ギリギリ回避に成功した。


                                            《完》


はじめましての方々は、はじめまして!

何らかの形で私の事をご存知の方は、遠路遥遥ようこそ!

335でございます。


この度は【世界暦構想シリーズ『P・S・B-円卓学園-』】をご覧いただき、誠に有難うございました。

作品は如何でしたでしょうか?

なにぶん文学などを専門的に学んだ事の無い、なんちゃってアマチュア小説家の作品ですので、表現がくどかったり、この文章いらなくね? と思われたりもする部分が多々あったかと思います。

クオリティが低いのは百も承知です、ただ少しでも世界観や物語を楽しめていただけたのならば幸いです(批判や感想下さい! 寧ろ批判を下さい! なんでもしますから!)


ところで『円卓』というワードや設定などから解ると思いますが、今作のベースはかの有名な『アーサー王伝説』に私の書き続けている『世界暦構想』の設定を混ぜてファンタジーなSFチックにした内容です。

名前に関してもそこから頂きましたが、ちょっと解りにくい点もあるので、軽く答え合わせを…

【名前の由来】

主人公アルトは、言わずと知れた『アーサー王』

ヒロイン妖子は、アーサー王の妻『グィネヴィア』が【白い妖精】の異名だったので「白」と「妖」。

第二ヒロイン槍剣は、円卓の騎士『ランスロット』を漢字にして、ランスロットが騎馬戦を得意としたところから「馬」

嫌味な副会長の唐久多は、アーサーの即位時に反乱を起こすも、後に彼を助ける立場となる『カラドック』

友人である諸星は、円卓の騎士『ガウェイン』が『太陽の騎士』と言われているから。

アルトのAIマリンはアーサー王をサポートしていた魔法使い『マーリン』。

こんな感じです。

ちなみに、アルトが戦った真っ黒な警備型P・Sの元ネタも『黒い騎士』と呼ばれるアーサー王伝説縁の敵でした。


さて、何度か前述した『世界暦構想』という物ですが、初見の皆様(おそらく九分九厘の方々)は「なんぞや?」と思う事でしょう。

これは、私が小学生の頃に書いた「俺の考えた○○」的な、いわゆる『黒歴史ノート』を中卒浪人をしていた頃に携帯小説として再編して公開していた作品群をベースとして世界観の事です。

短編長編問わず、アマチュアとしてこれまで書いてきた全ての作品が同一の世界で描かれており、設定やキャラが作品をまたいで登場したりもします(作品ごとにメインとなる時代や、国、地域が違いますが)

特に今作においては、槍剣の種族【ロプス】という存在の起源と、アルトが手にした【聖の石】については、私が人生で一番最初に書き上げた処女作品を読むと解るようになっています。

そちらの方は「エブリスタ」様で『初版』を公開しており、現在は大幅な修正や加筆を加えた『同人誌版』も買えますのでの、少しでも興味があればご覧頂けるt(ry 宣伝乙


それでは色々とグダグタ書きましたが、いつかまたお目に掛かれる日を信じて。

以上、コレまでのお相手は335でした!

To Be NEXT Time バイバイ!

有難うございました! ヽ(・∀・)ノ

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