【詩】「金子みすゞ『蝉のおべべ』より」「あたりまえの不思議」
「金子みすゞ『蝉のおべべ』より」
堪らないのです
その眩しさ
その哀しみ
透き通るばかりの言葉
突き抜けるような余韻
あなたの詩は
優しすぎる
詩人の魂に
まっすぐ
従って
虫を
草を
海を
小鳥を
故郷を
涙の後の澄んだ胸のように
美しく切り取って
写真一枚残して
ぷつんと消えてしまった
あなたは望まないでしょう
どんな思いだったのか
振り返られることを
だから
あなたのこころの
光を見ます
影の中に眠る
悲しみを
起こさないように
「あたりまえの不思議」
あたりまえを不思議と思うこころを
何時失ってしまったのだろう
子どものころ
何もかもが不思議だった
誰に訪ねても答えはなく
本の中に見つけたこともあった
いいえ
見つけたのは不思議があるということ
正体はまだ分からないまま
蘇るだろうか
あのこころは
寂しくわたしの物陰で
声をかけられるのを
待っているのだろうか